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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十五話 将官会議
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フォーク中佐、お前さんには頭が下がるよ。

「イゼルローン要塞にはオフレッサー上級大将、リューネブルク准将がいることが分かっています。彼らが簡単に要塞の占拠を許すとは思えません。もう少し慎重に考えるべきではありませんか」

フォークが呆れたというように首を振った。そして芝居気たっぷりに周囲を見渡した。
「小官にはどうしてヴァレンシュタイン大佐がそのように敵を恐れるのか、理由が分かりません。オフレッサーなどただの野蛮人、リューネブルクはこずるい裏切り者に過ぎないではありませんか」
「……」

「敵を過大評価し必要以上に恐れるのは武人として最も恥ずべきところ。ましてそれが味方の士気を削ぎ、その決断と行動を鈍らせるとあっては意図すると否とに関わらず結果として利敵行為に類するものとなりましょう。どうか注意されたい」

決めつけるような言い方だった。フォークは会心の表情をしてロボス元帥を見た。ロボス元帥も満足そうな表情だ。そして笑い声が聞こえた。ヴァレンシュタインだ。会議室の人間がぎょっとした表情でヴァレンシュタインを見た。

「ここは作戦会議の場ですよ、フォーク中佐。疑問点があれば問いただし、作戦の不備を修正し成功の可能性を高めるのが目的の場です。それを利敵行為とは……」
ヴァレンシュタインは笑うのを止めない。フォークの顔がまた屈辱に歪むのが見えた。

「小官は注意していただきたいと言ったのです。利敵行為と断言……」
「利敵行為というのがどういうものか、中佐に教えてあげますよ」
「……」
ヴァレンシュタインは笑うのを止めない。嘲笑でも冷笑でもない、心底可笑しそうに笑っている。

「基地を守るという作戦目的を忘れ、艦隊決戦に血眼になる。戦場を理解せず繞回運動等という馬鹿げた戦術行動を執る。おまけに迷子になって艦隊決戦に間に合わない……。総司令部が迷子? 前代未聞の利敵行為ですよ」

フォークの顔が強張った。ロボス元帥の顔が真っ赤になっている。そして会議室の人間は皆凍り付いていた。聞こえるのはヴァレンシュタインの笑い声だけだ。目の前でここまで愚弄された総司令官などまさに前代未聞だろう。

「フォーク中佐、貴官は士官学校を首席で卒業したそうですが何かの間違いでしょう。もし事実なら同盟軍の人材不足も酷いものですね。貴官が首席とは……、帝国なら落第間違いなしですよ」
「な、何を、私は本当に」

言い返そうとしたフォークの言葉をヴァレンシュタインが遮った。
「フォーク中佐、貴官の軍人としての能力など誰も評価していません。それなのに何故ロボス元帥に重用されるか、小官が教えてあげましょう。貴官には分からないでしょうからね」
「……」

フォークは小刻みに震えている。落ち着きなくロボスとヴァレンシュタインを交互に見ている。
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