第40話<長い一日(下)>
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ですか?」
意外な事実に神戸も驚いたようだ。
しかし呉は、あまり関心なさそうに、お茶をすすっている。おっさん!
さらに舞鶴に至ってはウトウトして眠そうだ。お前なあ。
しかし神戸や呉、そして舞鶴に比べると、一番後から出来た美保なんて、取るに足らないだろう。伝統ある呉や舞鶴鎮守府様とは格が違うよな……。私が半分僻んだ気持ちになっていると青年将校が私のほうを見ている。
また、突っ込みか? ちょっと構えた。
「だから司令」
「ハッ」
今度は何?
「ここに君を着任させたのは過去の戦歴だけでない。艦娘たちの意見も広く聞いた上での軍令部の判断だと理解して貰いたい」
「……え?」
またビックリした。倦怠感が飛んで逃げた。
時計は11:45を指している。
将校の発言に周りの参謀たちも驚いていた。特に舞鶴は目を大きく開いている。彼の眠気も飛んで逃げたらしい。
将校はメモを取り出して続ける。
「君の戦歴を見たが……冬の舞鶴での艦娘との初陣は惨敗、負け戦だ。そして、その後の転属願い……」
「はあ」
力なく応える私……さすが良くご存知で。
だが彼は私を無視するように続ける。
「以後の艦娘が絡む作戦でのたび重なる命令無視もあるな」
これには神戸や呉、そして舞鶴までが目を丸くして私を見ている。それは軍人として、あるまじき行為だ。さすがに、ちょっと恥ずかしい。
思わず頭をかいて赤くなる私。
将校は言った。
「本来なら、お前は閑職に甘んじるか下手すれば軍法会議モノだな」
穴があったら入りたい。
しかし構わず彼は続けた。
「結果として、お前が多くの艦娘を轟沈や自沈から救ったことも知っているがな」
ありゃりゃ? 祥高さんと大淀さんがこっちを見ている。今度は、ちょっと別の意味で恥ずかしくなってきた。まったく今日は晒し者だな。
将校はメガネを押さえた。
「艦娘は非常に特殊だ。だからこそ我々も一兵卒としてではなく対等な戦士として敬意を持って接する必要があるだろう」
将校の、この言葉で会議室の空気が一変した。私も参謀たちも正直、艦娘たちの価値を認めて居なかった。
だが彼の説明を聞いていると艦娘に対する見方が根底から変わっていくような感覚だった。
窓から入る海風は、いつもの美保湾の清々しい潮の香りに戻っていた。
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