Side Story
少女怪盗と仮面の神父 43
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「七年前、ハウィスさんが貴女を引き取る為に騎士の位を授かった事は思い出しているでしょう？」
「？ はい」
ハウィスと抱き合っていた時。夜空で黒く濡れた視界の隅にベルヘンス卿の顔を見付けた瞬間、幾つもの記憶が急浮上して様々な疑問の答えに繋がった。
多分、前に倒れた時と同じ「死にかけた自分を見下ろす彼の心配そうな顔」が切っ掛けとなり、自分で自分に掛けていた暗示もどきの思い込みが完全に解けたのだろう。
高熱で臥せた夜にベッドの横で交わされていたハウィスと王子の会話も、つい先日聴いたかのようにハッキリと思い出せる。
『騎士の称号を得るという事は、お前自身が嫌悪してやまない権力者共の正式な犬になるって事だぞ？』
『……承知しています』
国内の秩序と人心を乱す盗賊が、実は国防に携わる立場の人間だった……などという不祥事を隠す為に王子が剥奪したのか、或いは彼女が自ら返上していたのか。出逢って間も無い頃のハウィスは、爵位も領土も騎士の位も、何一つ持ってなかった。
偶然出逢った幼い密入国者を匿う代償として、彼女は剣を……自身と誰かの体を赤黒く染める凶器を、自らの意思で再び手に取ると決めたのだ。
『良いだろう。お前は私が後ろ楯を務めてやる。コイツはお前が、好きに見届けてやれ』
『あ……ありがとうございます、エルーラン殿下！』
……四年。
ウェミアの首切り自殺から、まだ四年しか経ってなかったのに。
自身の行いが招いた死を間近で目撃した所為で「骨人形」とまで言われるほど衰弱していたハウィスが、誰かを害する力なんか貰ったって、忌まわしく思いこそすれ喜ぶ訳がない。
彼女が安堵と喜びに声を弾ませたのは、ミートリッテの引き取りを正式に許されたからだ。
『ただし。コイツには他の侵領者同様、後催眠暗示を掛けておく。もしもコイツがアルスエルナにとって害悪となるなら、その時は』
『させません。私が。決して。』
初めは、ブルーローズが生み出した被害者達への罪滅ぼしだったのかも知れない。
彼女の目に映った「行き場を失くしてさ迷う小さな子供」の姿はきっと、望まれぬ形で生を受けた挙げ句産みの母に捨てられてしまったアルフィンや、職を失って途方に暮れる人達の影と、ピッタリ重なっていた。
そんなミートリッテを一人前の人間に育てられたら、ほんの少しだけ……赦される気がして。
『だ、そうだ。折角だし、お前もこういう面白い女に育てよ？ 間違ってもクソつまらない木偶の坊なんぞにはなるな。私が退屈する』
ネアウィック村に来てアルフィンと出逢い、恐らくはアルフィンとの触れ合いを通して回復した数年後。隣国からの密入国者を匿い育てる代わりに、恐怖すら抱いている大嫌いな剣を受け入れた。
その並々ならぬ決意を面白いと評価する王子はどうかと
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