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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
外伝
外伝『魔弾と聖剣〜竜具を介して心に問う』―前章
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これは、一人の傭兵の物語だ。
ヴィッサリオン――大陸が戦争の最中にある時代の末に、一人で傭兵団を立ち上げた男。齢30代に差し当たる前までは、ジスタート運河ヴァルガ大河における防衛戦の英雄となり、また、王都主催の問筆記学会においてもその文才を発揮し、太陽際(マースレニツア)での武芸大会では多大な称号を授与された経歴を持つ。だが、光華のように輝かしい彼の道筋はそれで終わらない。数ある傭兵団でも指折りの人脈を持つと同時に、誰もが認める稀有の人格者でもあった。
彼こそは英雄。奴隷、民、商人、貴族、騎士、王族問わず受け入れられ、ヴィッサリオンの類まれなる親和性は遺憾なく発揮される。勢力圏紛争止まぬご時世、傭兵の需要が一層高まる時代の中だからこそ、彼のような、能力のみならず秀でた外見でも、大陸中の民衆は幻想の中の「勇者」を求めたのだ。
英雄の中の英雄。そして、立ち上げるであろう『白銀の疾風(シルヴヴァイン)』の名をあやかって、やがてこのような二つ名で呼ばれるようになった。『銀閃の勇者―シルヴレイヴ』と――
歩む戦歴が正統であると同時に、彼は傭兵の矜持としての異端さえも歩んでいた。

――戦場であっても人は殺さず。『不殺の傭兵』として――

――これから語られる男の物語は、まだヴィッサリオンが『星』を集めて『丘』を目指していた、若かりし一人旅の頃のものである――





『数年前・ジスタート領海警戒区域』





ジスタートに訪れた――未曾有の危機。カヴァクなる機械文明の到来、すなわち『黒船来航』。
ジルニトラ……黒竜の動脈たる『ヴァルタ大河』に接する3国は、真っ先にその黒船の標的とされた。

一つは、黒竜の顎熱たる『レグニーツァ』――
一つは、黒竜の眼光たる『ルヴーシュ』――
最後は、黒竜の逆髪たる『オステローデ』――※1。

黒竜の誇りを象徴する顎熱(あぎと)をくぐり、眼光を誤魔化し、逆髪をなでまわした後の到達すべき最終目標は、黒竜の心臓たる『王都シレジア』。へ――
東の『獅子』がその獲物を狙う『眼光』を研ぎ澄ませ――
西の『黒竜』が略奪者に対して『天鱗』を誇示させる――
のちに『ヴァルタ大河攻防戦』とよばれる戦いが、始まろうとしていた。





◇◇◇◇◇





「違う!そうじゃない!操舵は基本的に――」
「いや!そんなことない!敵と遭遇した時、こいつはこうで――」

さっきから、マドウェイとパーヴェルは船操術について『ああでもない』、『こうでもない』と口論している。まだサーシャを主と仰ぐ前にして、見習いである若かりし二人を面白く見守るのは、熟練の先輩方や後輩の船兵である。
やがて二人の差しでぐちに、「なにをやっているんだい?君たちは」と声をかけた者がいた。その声
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