アージェント 〜時の凍りし世界〜
第一章 《凍てつく白銀の大地》
圧倒的被害
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いた。
「お嬢様ー!私からはコレです!」
ミミが氷雪に渡したのはセーターだ。手編みのそれには魔法を使った細工がしてあり、常に空間中の魔力を吸収して簡易のバリアジャケットになるという機能を備えてある。
氷雪がニッコリと笑顔を浮かべる。が、暁人はどこか浮かない顔だ。
「……お兄ちゃん?どうした…の?」
「いや……ごめんな?氷雪が本当に欲しい物を贈ってやれなくてさ。」
「……ううん。大丈夫……いつか必ず…良くなるから。」
「………。」
暁人は知っている。氷雪の病気は時間が解決してくれるものでは無いと。それどころか、放っておけば……最悪のケースも想定しなくてはならない事も。
「……きっと、来年の今頃には、元気に外を走り回ってますよ!ね、ご主人様?」
「……そうだな、何を後ろ向きになってるんだか。」
そう、故に暁人は決断した。氷雪の病の、その元を絶つと。そのためなら、管理局だろうが世界だろうが敵に回すと。
(……だよな、ハボクック?)
口には出さず、心の中で相棒に問い掛ける暁人。それに応える様に、首から下げたペンダントが僅かに光った気がした。
「お兄ちゃん……ミミ……これ、私…から。」
氷雪が取り出したのは二つの蒼氷色の半透明なクリスタルだ。
「……これは、」
「お守り代わりに……って思って。」
二人共に見た瞬間に分かった。これは氷雪の魔力の結晶体だ。アイスブルーは氷雪の魔力光の色である。さらには意識しなくても感じ取れる高密度の魔力。しかし……
「氷雪……平気なのか?」
氷雪の病名は『特異性魔力循環障害』。リンカーコアの異常により、発作的に体内の魔力循環が上手くいかなくなる病気だ。発作の起こるタイミングは全くのランダムだが、魔力が安定状態にあればあるほど起きにくくなる。
しかし何の因果か、氷雪には膨大な魔力が備わっている。魔力は大きい程に制御が難しくなるため、氷雪は魔法を使うほどに発作のリスクを負う事になる。
故に暁人は、最低限を除き魔法は殆ど教えてこなかった。その氷雪が魔力の物質化という複雑な術式を行使したのだ。暁人が心配にならない筈が無かった。
「うん……平気。制御は…エヴァさんに手伝って貰ったの。」
安心させる様に笑顔で応える氷雪。たしかに顔色は悪そうには見えない。
「………その…ダメ、だった?」
「……いいや。氷雪が俺達に作ってくれたんだろう?大切にするよ。ハボクック。」
〈Aye Sir.〉
ハボクックが本体部分を展開し、その柄の先端近くに結晶を取り付ける。
「どうだ?」
〈No,problem.〉
少し離れた暁人はハボクックを一振りする。
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