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守りたいだけ
事の始まり
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通り魔だ!」
黒ずくめの奴は僕に気付き、走って静愛に急接近。チラと見えたが刃物らしい物を光らせている。間違いない、こいつが・・・・
静愛は僕の声が届き、後ろを振り向いた。刃物が眼にはいったのか、顔が青ざめている。
「助けて、響也!」
言うが早いか、黒ずくめの奴は刃物を突き刺した。
刺し口から鮮血が流れ出し、下に滴り、そして紅い血だまりが出来つつある。まるで紅い月のような色彩を放って。
「残念、だったな、この通り魔め・・・・・・」
「ねぇ、響也、嘘だと言ってよ。嘘でしょ、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘、ねぇってば!」
静愛が目を見開いて叫んだ。
多分腹部、大量な出血量だ。致命傷、終わったな。
「チッ、ミスっちまったか。よりによって男」
黒ずくめのは呟くと静愛を見据えた。
「静愛、逃げろ」
「でも響也、ち、血が」
「いいから行けよ!」
僕は苦し紛れに怒鳴った。
痛い、苦しい、息が出来ない。傷口は燃えるかのように熱を帯びていた。もしこれが生だと言うなら、僕の人生は、ちゃんと僕は生きていたと言えるのだろうか。
わかってるよそんなこと。こんなのは屁理屈さ、僕はこれで人生を終える。人間らしい生き方とは言えないし、僕らしく生きたとも全く言えるものじゃない。
でも、それでも生きてるって感じた時があった。それは静愛といた時間、静愛と生きている時間だ。これって走馬灯なのかな。フラッシュバックと言うか、今までの思い出とか記憶を超短時間で懐かしんでるだけのようの思うんだけどな。
あ、そっか、僕は前からずっと静愛のこと・・・・・・
静愛は竦んで腰を抜かして震えている。黒ずくめを気にするよりも僕を心配して。
どうした静愛、いつもの荒っぽさはどこ行ったんだ。優柔不断モテないとか言って僕に無駄話してたじゃないか。何を迷ってんだ、早く逃げてくれよ。
黒ずくめのはゆっくりと静愛に近づく。じわじわと嬲るかのように。
ああ、この光景、学校でよく見たな。まるで僕だ。
「響也、響也、響也、ねぇ、死なないでよ。まだ私話したいことあるんだよ、伝えたいこともあるんだよ、しっかりしてよ。またいつもみたいに屁理屈ばっか言ってよ!」
黒ずくめは刃物を振り上げた。刃物は異様な色を光らせていた。始まりを告げるかのような、謎めいた淡い光を。
刹那、刃物は静愛に向かれ、振り落とされた。
「静愛、避けろ!」
この叫びは声にはならず、僕は力尽きた。

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