第30話(改1.5)<錯綜と弱小>
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停泊しているくらいです」
「な、なんと!」
思わず馬鹿みたいな返事をした。
「山陰地方の要(かなめ)足る美保鎮守府で、この有り様か」
ガックリ来た。
いや、もちろんここは設置されたばかり。どうしても艦隊編成が歪なのは仕方がない。
(それでも潜水艦が居ないとは!)
もはや舞鶴よりも、かなり下。実質的には半分以下の艦隊勢力だ。
現存の潜水艦らしきものは、かろうじて陸軍の『お荷物』だけか。
「『まるゆ』は実験船だろ?」
「はい」
祥高さんも苦笑している。
『まるゆ』は実戦に投入出来ない。悪く言えば陸軍から押し付けられた。
「こりゃ、だめだ」
思わず本音が出た。あまり貧弱な現実を突き付けられた私は、へなへなと全身の力が抜け椅子からずり落ちそうになった。
「司令、顔色が」
祥高さんが心配する。
「……」
いつもなら直ぐに「大丈夫だ」って返したいところだが、さすがにこの弱小ぶりは衝撃的だ。
(やっぱり美保は私への左遷人事だったか?)
海軍上層部からの嫌がらせだろうか?
(しかもそこへ陸攻の囮作戦だぞ)
私は天井を仰いだ。
「はぁ」
深くため息をついた。
「やれやれ」
悩んでも始まらない。もしこれが上層部からの嫌がらせだったとしても指揮官として責務は果たさなきゃ。
そのとき、かなり遠くから聞き覚えのある陸攻の低い発動機の音が徐々に響いてきた。しかも一機ではない。やはり編隊だ。
「なんだか……まずいな」
悪い予感がした。
あの長い髪の深海棲艦。不気味で不敵な瞳の笑顔が私の脳裏に浮かんだ。また鳥肌が立った。
そんな中、陸攻の音は美保湾じゅうに低い重奏を奏で続けていた。
以下魔除け
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