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艦隊これくしょん 災厄に魅入られし少女
第三話 本土からの使者
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すると海原少将が懐かしむように言った。

「そうだな………先輩は一言で言うなら正義感の強い人だった。艦娘達と共に常に最前線で戦い続け、市民を守り続けていた。時には上官の命令を無視しては罰として反省文を書かされていたな。
「……そして何よりも、先輩はとても優しい人だった。艦娘を兵器としてではなく、一人の人間として扱っていた。そのため、多くの艦娘に慕われていたよ」
「そうだったんですか………でも、どうして父さんは提督を辞めたんですか?艦娘に嫌われていたわけでもないのに」

凰香は一番気になっていたことを海原少将に聞いた。
話を聞く限り父親は艦娘に慕われていた。それなのに提督を辞めた理由がわからなかった。
すると海原少将が少し間を空けてから言った。

「………とある作戦で、先輩の艦隊が深海棲艦の奇襲を受けてしまってな、その艦隊の旗艦であり秘書艦だった艦娘が深海棲艦の砲撃から先輩を庇ってな。先輩は軽傷で済んだが、艦娘の方は修復不能にまで大破してしまった。
「それで艦娘は解体され、先輩は責任を取って提督を辞めたのだ。……そしてその後任になったのが、あの愚か者だったのだ」

そう言って海原少将が話し終える。凰香はしばらく黙っていたが、やがて両手の拳を握り締めて海原少将から離れるように立ち上がる。そして海原少将の方を向いて静かに口を開いた。

「………どうして、奇襲作戦が行われることを父さんに言わなかったんですか?あなたが父さんにそのことを伝えていればこんなことにはならなかったのに」

声はいつも通りではあるが、凰香の眼は赤く染まっていた。それだけ凰香は無意識に怒っていた。
無理もない。あの時海原少将が事前に父親にこのことを伝えていれば、家族も友人も死なずに済んだのだ。
すると海原少将が言った。

「……言い訳になってしまうが、あの奇襲作戦はあの愚か者が私達に報告せずに行ったもので、私達は奴が防空棲姫を沈めたという報告を聞いた時に初めて知ったのだ。そして、その時から先輩と連絡を取ることができなくなった。当初は旅行にでも行っているのだろうと思っていたが、10年過ぎても連絡が取れなかったから、さすがにおかしいと思い始めたのだ。……そしてその時に比叡が教えてくれたのだよ。あの鎮守府で行われていたことを」
「……比叡さんが?」
「ああ。比叡はボロボロの姿で私の鎮守府の前に倒れていてな。かなり衰弱もしていたから、すぐに治療をしてなんとか一命を取り留めたよ。とはいえ意識を取り戻しても私達人間をかなり怖がってしまっていてな。私にはおろか艦娘達にすら警戒してしまい口を開こうともしなかった。そして10年が過ぎた頃に私が佐世保第十三鎮守府の初代提督の後輩だということを知ってくれてな。やっと心を
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