第28話(改1.3)<深海棲艦>
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「しんかいせいかん?」
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マイ「艦これ」「みほちん」
:28話(改1.3)<深海棲艦>
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「これが最後の戦闘か。じゃが悔いは無いぞ」
作戦指令室の無線機から利根が呟く。
私は叫んだ。
「利根ぇ、最後まであきらめるなっ!」
間髪を居れず
「てぇーっ!」
珍しく日向の叫び声が入った。次の瞬間スピーカーが爆音でガリガリと壊れそうな音を立てた。
ハッとした大淀さんが立ち上がって窓を開いた。
「司令、あれを!」
彼女が指差した方向、夜の美保湾に海戦の様子が見える。島根半島の右側の海にはボンヤリと幾つもの大きな水柱が立つのが見えた。
「日向?」
呟くと直ぐに彼女の声が入った。
「機銃掃射により敵魚雷、破壊!」
さすが、日向。
「恩に着るぞ日向」
利根の弱々しい、かすれ声が入った。
「はは利根も、そういう声出せるんだぁ」
などと感心している場合ではない。
「双眼鏡はあるか?」
私は大淀さんから受け取った双眼鏡で水柱が上がった方向を覗いた。
辺りは既に暗い時間帯だ。ただ海上は水面が鉛色の空を反射して陸地よりは多少明るく見える。遠くには日向と利根、その他の駆逐艦らしい艦影がポツポツと確認できた。
「山陰らしい水墨画のような絶妙な陰影だ」
いやいや、感心している場合ではないぞ。
魚雷攻撃の後、敵の潜水艦は沈黙している。
「いったん攻撃を止めたのか?」
大淀さんが振り返る。
「戦闘海域では敵との睨み合いが続いているようです」
無音ながら海域のピリピリした雰囲気が、こちらにも伝わってくる。
いつの間にか美保湾の雨はやみ風も緩やかになっていた。海上のモヤも晴れている。
次の瞬間、私は日向の右側に何か白い突起物を確認した。
「あれは何だ?」
大淀さんも別の双眼鏡で確認を始めた。
「あれは、深海棲艦!」
私は息を飲んだ。
「しんかいせいかん? あれが」
敵の本体を肉眼でハッキリ見るのはこれが初めてだ。遠目にも、その禍々しい気配が伝わってくる。
奴は不気味に髪を空中に漂わせながら何もせずに佇(たたず)んでいる。全身が白っぽい彼女、暗い背景と相まって絶妙な対比だ……いやいや感心している場合ではない。
「むっ」
気のせいだろうか? 敵である彼女が遥か彼方から私を見て笑っているように感じた。
「まさか?」
鳥肌が立った。思わず双眼鏡を下ろした私は慌てて両腕を押さえた。
寛代が大きな瞳をこちらに向けていた。
「大丈夫だ、寛代。単なる武者震いだよ」
私は、そう言いながらも引
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