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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十一話 作戦計画書
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この位置に三千隻ほどの艦隊を置きます。それでこの作戦を潰せるでしょう」
思わずヴァレンシュタイン大佐を見ました。大佐は無表情にこちらを見ています。

「ミサイル艇を側面から攻撃、防御力の弱いミサイル艇はひとたまりも無い……。そのまま天底方面に移動、要塞主砲(トール・ハンマー)の射程範囲外に展開した同盟軍を攻撃する」

“うーん”という声が聞こえました。ヤン大佐です。
「それをやられると確かに拙いな」
「拙いのか?」
「ああ」
「……なるほど、確かに拙いな」

ヤン大佐とワイドボーン大佐が顔を顰めています。
「あの、何処が拙いんでしょう。相手は三千隻なんですから攻撃すればいいんじゃ……」

私の問いにヤン大佐が頭を掻きました。
「それが出来ないんだ。この攻撃を回避して敵を攻撃しようとすれば艦隊を移動させなければならない。そうすると要塞の主砲射程内に入ってしまうんだ」
「要塞主砲(トール・ハンマー)の一撃で勝負有りだな」
「同盟軍が後退すれば帝国軍主力部隊が追撃してくるだろう。同盟軍は正面と下から攻撃を受ける事になる」
「はあ、そんなあ」

思わず声が出ました。三千隻です。たった三千隻の小艦隊が有るだけで作戦が失敗? そんなの有り? 到底信じられません。いえ、それよりヴァレンシュタイン大佐です。なんでそんな事を考え付くの?

まともに作戦計画書を読んだとも思えません。それなのになんで? ヤン大佐もワイドボーン大佐も気の抜けたような顔をしています。そしてヴァレンシュタイン大佐は詰まらなさそうにスクリーンを見詰めている……。

こっちをやり込めて“どうだ”とでも得意げになるのなら、可愛げは有りませんが人間味は有ります。それなのに無表情で今にも“何処が面白いんです”とでも言い出しそうです。根性悪のサディスト! 同盟軍の敵は帝国じゃなく、ヴァレンシュタイン大佐のように思えてきました。 

「ヴァレンシュタイン大佐、帝国はそれに気付くかな?」
気を取り直したようにワイドボーン大佐が問いかけました。
「気付く人物は居るでしょう。ただ……、実施できるかどうか……」

ヴァレンシュタイン大佐は答えた後考え込んでいます。そんな大佐にヤン大佐が戸惑いがちに声をかけました。
「ああ、その、ミューゼル准将なら気付くかな?」

問われたヴァレンシュタイン大佐より私のほうがびっくりしたと思います。思わずヤン大佐とヴァレンシュタイン大佐を交互に見ていました。ヴァレンシュタイン大佐は私がキョロキョロしているのには気付かなかったようです。考え込みながらヤン大佐に答えました。

「間違いなく気付くでしょうね、気付かないはずが無い。ただ彼は前回の戦いで功績を挙げる事が出来なかった。昇進は出来なかったはずです。彼が率いる艦隊は二百
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