第26話(改1.3)<電・イナヅマ>
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「早く終わって欲しいよね」
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マイ「艦これ」「みほちん」
:第26話(改1.3)<電・イナヅマ>
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私は顔を上げた。そこには、お盆を持った可愛らしい駆逐艦がいた。
「君は確か?」
彼女は言った。
「はい『電』なのです。『雷』ではないのです」
ニコニコしながら、その艦娘は食卓に珈琲茶碗を置いた。
「司令官は大変なのです。珈琲を飲んで一休みなのです」
「あ、ありがとう」
……思い出した。いなづまは、この鎮守府では最初から居る艦娘だった。
「そうなのです。いなづまは最初からここにいるのです。何でも聞いて欲しいのです」
私の思いを見透かすように彼女は答えた。
しかし外見と経験が一致しないのが艦娘たちの難しいところだ。
特に駆逐艦と見るとつい子ども扱いしたくなってしまう。
でも往々にして彼女たちは実は年齢が想像以上に高い。下手すると若い指揮官よりも年上ってこともあるのだ。
電はお盆を持ったまま言った。
「みんな大変そうだったのです。見ていて可哀想なのです。だから司令も、支えたいのです」
言葉は少し、たどたどしい。でも想いの深さはグッと来る。無愛想な大人連中に見せてやりたい。
多くの艦娘は純粋だ。そんな彼女たちを指揮する立場になると、その一途さが、かえって苦しくなることもある。
私が艦娘を指揮したくないのは、そういうところにもあるのだ。
だが、これは戦争だ。話し合いの通じない相手がわが国に攻めてくる以上、誰かが盾になり防御するしかない。
私は珈琲を手に取った。
「戴きます」
「はい」
電はニコニコして立っている。不思議な子だ。
こんな小さな艦娘でも最前線で戦い傷つき、無数の悲しみを乗り越えて生還してきている。
そんなとき私はいつも自分の原点でもある、あの「白い海」に還らざるを得ない。
多くの犠牲の上に立つわが国。平和は微妙な力加減の中で成り立っている。いつ、どこから均衡が崩れるか。果たして終わりを迎えるのか。分からない。だが使命を持つ我々が戦い続けなければならない。
「早く終わって欲しいよね」
つい言葉が出た。
電は不思議そうに少し首をかしげながら言った。
「そうなのですか?」
私は苦笑した。
「いや、何でもない」
そして珈琲カップに口をつけた。少し気持ちが落ち着いた。
彼女は、お盆を持ったままニコニコして見守っている。
気温は次第に下がる。雷光と雷鳴の間隔も短くなってきた。窓の外で否妻が走ると艦娘たちが悲鳴を上げる。嵐になるな。
「
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