暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
袋叩きはドラム缶の中で
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だが、その犯人に病気の娘がいたら?襲った家が悪徳な高利貸しなら?《正義》なんてそんなモノだ。その時、その状況、要素次第で容易くひっくり返る」

人と人が違うのは当然だ。

人種、国籍、男女、地域、身分、貧富、宗教、学歴、身体、思想、政治、時代、信条。

一つとして主義主張が同一の人間など存在しえない。むしろ、そういった違いのある人間が寄せ集まって形成されるのが社会とも言えよう。何億もの細胞が寄せ集まり、各々が違う役割をしつつ多細胞生物としての個を成しているように、差異があるという状態こそが生命としてあるべき姿なのかもしれない。

《正義》も同じだ。

万人がさえずるそれを一つ一つ丁寧に細分化していくと、一つとして同じものはない。国ごとに定められている法律だとて、それは常識であって《正義》ではないのだ。

もっと言えば、法律とはその国々の中で一番多く手の上がる多数決で決められ、冷酷な大多数で少数の意見をすり潰していった結果に過ぎない。

「では《正義》とは何か?見方によってプリズムのように変わるソレを、絶対で不変の定義に引きずり落とすには、どうすればいいか」

男は、ぐっと拳を握った。

それをそのまま叩きつければ、アバターどころか地形データすら変えかねないそれを、握る。

「答えは、貫くことだ。他人の主張に耳を貸さず、他人の考えに傾倒せず、己の中の絶対条件(ルール)だけに従って淡々と執行する。分かるか?《正義》とは抱くモノではない。貫くものなのだよ」

がしゃん、という重々しく、同時に物々しい音が夜の森に響き渡る。

「理由など、所詮は粘ついた理論武装だ。それですっきり説得できるほどの《正義》など、どれほどの価値がある?他の者の《正義》に感化される時点で、それはもはや残骸と名乗ることすらおこがましいとは思わないか」

肩に背負われていた大戦斧(ラビュリス)が、肩口を離れ、肉厚な刃がギリギリと引き絞られていく。

彼は先刻、言った。

ゲームイズオーバーだと。

身体中の毛が総毛だつ圧力を浴びながらも、そんなことは些細な問題だとばかりにへたり込むロベリアは、呆然とした調子で言った。

「……ふ、ざけんな、ふざけんなよ。そんな、そんなのは、正義なんかじゃない。英雄が見方を変えただけで、犠牲となった少数を切り捨てた史上有数の殺人鬼になるように、テメェの言っている正義ッつーのは――――」

「悪いな」

ずぅ、と。

ただでさえデカいヴォルティスの体躯が、蜃気楼のように一回りも二回りも大きく歪んだ気がした。

そう、彼はそれを実行してきたのだ。

今や伝説となりつつある、鋼鉄の魔城――――その第一線。当然、通り一遍の正義を通すのは、並大抵のことではない。全を取るために、個を切り捨
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