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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二十話 マルコム・ワイドボーン
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しい、あの横着者め。グリーンヒル参謀長は俺達のことをとりなそうとしてくれたようだが無駄だった。
心の狭い男だ、ドジを踏んだのは自分だろう。それなのに他人に当たるとは……。宇宙艦隊司令長官がそれで務まるのかよ。笑って許すぐらいの器量は欲しいもんだ。
まあ、俺も他人の事は言えない。今回はヤンにかなり当り散らした。分かっているんだ、ヤンは反対されると強く押し切れないタイプだって事は。でもな、あそこまで俺を警戒しておいて、それで約束したのに一時間遅れた。おまけに結果は最悪、そのくせ周囲は大勝利だと浮かれている。何処が嬉しいんだ? ぶち切れたくもなる。
しかしね、まあちょっとやりすぎたのは事実だ、反省もしている。おまけにロボスに疎まれて俺と同室になった。ヤンにしてみれば踏んだり蹴ったりだろう。悪いと思っている。
おかげで今、凄くこの部屋に居づらい。仕事があれば良いんだが仕事なんてものは無い。つまり、男女三人がする事も無く気まずい雰囲気の中、部屋にいることになる。
仕方が無いんで俺は弁護士の勉強をしている、ヤンは紅茶を飲みながら本を読むか、昼寝だ。サアヤはする事も無くボーッとしている。まあ和解のメッセージじゃないが俺は毎日クッキーを作っている。
サアヤは喜んでいるし、ヤンもクッキーを食べながら紅茶を飲んでいる。会話など殆ど無いが冷戦ではないし熱戦でもない、強いて言えば雪解け間近、そんなところか。雪崩が起きないようにしたいもんだ。
ドアが開く音がした。バグダッシュだろう、奴は時々情報収集をして来たと言って要塞攻略戦の準備状況を教えてくれる。それによれば八月の初旬には出兵する事になるらしい。
「ヴァレンシュタイン大佐、あー、その、クッキーを貰っても良いかな」
「……」
目の前に居たのはバグダッシュではなかった。マルコム・ワイドボーン大佐、ヤンとは士官学校の同期生で十年来の秀才といわれた男だ。
こいつ、甘党か? そんな感じには見えんがな。背も高いし、がっちりしている。眉は太いし、どちらかと言えば男くさい顔立ちなんだが、それがクッキー?
「駄目か?」
こいつも本当ならどっかの艦隊の参謀長になっているはずなんだが、司令部に参謀として召集されている。原作だと今度の第六次イゼルローン要塞攻略戦でラインハルトの前に敗れて戦死するんだが……。
「私は構わない、後はその二人に訊いてください」
俺はヤンとサアヤを見た。二人とも顔を見合わせてからワイドボーンに頷く。それを見てワイドボーンがクッキーに手を伸ばした。
「美味いな、貴官が作ったクッキーは美味いと聞いていたが、本当だ。やはり仕事をして疲れたときには甘いものが一番だ」
こいつ喧嘩売ってんのか? 俺は構わんがヤンとサアヤにとっては嫌味にしか聞こえんぞ。さ
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