第十九話:邂逅
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、束から与えられた帽子を被り直すと、盲人用の杖を片手に歩き出した。閉じられた眼には、遥か彼方を疾走する一人の男の姿を鮮明に捉えていた。
「編田羅赦を発見。ワールド・パージ起動」
そこに彼女は居た。熱砂から襲いかから地獄も、照りつける日差しも、肌を荒らす潮風も意に介さず唯、唯ひたすら踊っていた。歳不相応なエプロンドレス。機械仕掛けの兎耳のカチューシャ。赤いハイヒールを履いた破綻者は紛れも無く、篠ノ之束その人だった。
ラシャは文字通り頭が真っ白になった。目的地のシークレットビーチへ向かう道中、追い求めていた標的が無防備に踊っていたのだ。あの時、十年前の夏の病院のICUで出会った時のままの姿で踊っていた。その時と寸分違わぬ無垢な笑顔で踊っていた。あの面の皮を剥げば一体どれほどの狂気が湧き出てくるのであろうか。
とかく、奴がこうして無防備な状態で居るのであれば好都合だ。ラシャは我に返ると、身を隠していたテトラポッドから相手を伺うと、カービン銃の薬室に初弾を装填した。備え付けられた中距離対応ダットサイトを覗き込むと、光点はしっかりと彼女の頭部にホールドされている。緊張の余り口内が異様に渇く。同時に舌がヒビ割れたのか、鋭い痛みが走り、口内に生ぬるい潤いと血の匂いが充満する。
落ち着きを取り戻すため、ラシャは深呼吸をした。大きく息を吸い、ゆっくりと吐く____最中、唐突に息を止めるラシャ。そのまま硬直しつつ、思い切って引き金を引いた。発砲炎とともに吐き出された一発の7.62x51mm NATO弾は旋条によって安定を与えられ、──篠ノ之束の頭をぶち抜いた。
兎耳のカチューシャだったものが、ぬらついた赤い液体と脳髄の欠片を道連れに砂浜に突き刺さる。かつての大天災だったものは、バレエの大トリを踊るかのようにスピンすると、潮騒に洗われた砂浜にどうと身を横たえた。
──やったか?
分類上は人類に値するものの、十年以上世界を欺いたその手腕は侮れない。科学が発達したこの現代において、ラシャは珍しく霊的なもの、スピリチュアルなものを信じている人間であった。だからこそ、相手が予期せぬ反撃をしてくる可能性を考えていた。
カービン銃を構えたまま、脚のホルスターから手製の竹包丁を取り出す。此度の仕事に合わせて厳選した自信作のうちの一振りだ。複数用意した中で、一番の自信作を取り出す。とりあえず首と胴体を分離させないと安心できない。その後はバラバラに解体して焼却する予定だ。余裕があれば酸で溶解した後投棄したい。
ラシャはカービンとナイフを同時に構えてすり足でにじり寄る。一歩ごとに緊張が走りぬける感覚に吐き気を覚えるが、今更退くわけにもいかない。
どうにか浜辺に横たえる束に接近することが出来た。足で軽く蹴り転がすと、頭部の残骸にこ
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