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ソードアートオンライン アスカとキリカの物語
アインクラッド編
食事と回想
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険性を理解しているような口ぶりだった。
まるで生き残ることよりも大切なことがあるような、そんな雰囲気だ。
そこまでして戦い続ける理由をキリトは自分でも不思議なくらい強く知りたいと思っていた。

アスカは黙考することしばし、ぽつりぽつりと言葉を零す。

「俺が、俺でいるため・・・。この世界に怯えて腐っていくくらいなら、憎みながら全力で戦い続ける・・・。死ぬことよりも俺はこの世界に負けることの方が怖い」

初めて心の内を晒してくれたアスカ。
しかし、まだ出会って一日すら経っていないような関係だ。キリトにはその言葉に込められたアスカの内面までは理解することができず、

「そうなんだ・・・」

曖昧な返事を返すだけだった。
自分で聞いておいて、その返事はなんだとキリトは思う。
自分の不用意な発言に後悔していたキリトに今度は逆にアスカが訊ねてくる。

「そっちこそ、どうなんだ?なんで女性プレイヤーなのに性別を偽ってまで攻略の最前線に単身やって来たんだ?」

またしても後悔がキリトを襲う。
同じ質問を返される可能性くらい考えて然るべきだというのに・・・。
キリトは思わず俯いてしまう。答える内容がまとまらない。



キリトのリアルでの本名は桐ヶ谷和葉。正真正銘の女だ。
本当の両親は小さい頃の事故で他界。その後、現在住んでいる桐ヶ谷家に引き取られた。
桐ヶ谷家は娘――桐ヶ谷直葉――が1人の3人家族に和葉が増えた四人家族だ。
今は父親が単身赴任しているので女性3人で生活している。
不自由なことなど何一つ無かった。母親も優しいし、妹の直葉とも仲良くやれていたが、

上手くやれていたのは10歳までだった。
始め、娘2人には和葉が引き取られた子供であることを両親は教えていなかった。
そこに両親のどのような配慮があったかは分からないが、和葉もまだ幼かったのでそのことに気がつくことはなかった。
和葉は義母親の血が精神的に移ったのか、祖父に教えられた剣道を続けるアウトドアな直葉とは真逆のインドアな趣味、ネットゲームの世界へとのめり込んでいった。
6歳の時には自作のマシンを立ち上げて義母親をも呆れさせた。
その趣味が災いしてか、和葉は10歳の時に自分の手で住基ネットにハッキング。本当の両親は既に死んでいることを知ってしまった。
だが、幸か不幸か、和葉は本当の両親が既に死んでしまったことにも、そのことを隠されていたことにも絶望や怒りを表に出すことはなかった。

しかし、和葉の中では生きていく上での価値観に大きな変化が起きてしまった。
今まで本当の両親や妹だと思っていた人たちは、本当は赤の他人だった。
じゃあ、他の人はどうなる?学校の友達は?先生は?
その疑問は和葉の中で少しずつ、だが確実に大きな物なっていっ
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