第十七話:殺人鬼の休日
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恐ろしさが、発情した蛇のようにうごめいていた。
───あいつだ、あいつがやったんだ。あいつが父さんたちを───。
「大丈夫か、シャル?」
ラシャの肩越しに一夏が顔を出す。自らを全肯定してくれた存在の登場によって何とか心の平衡を取り戻したシャルロットは、恐怖のあまり思わず抱きつきたくなる衝動を必死で抑えつつ、どうにか立ち上がった。
「あはは、ちょっと冷えちゃったみたい。着替えるからちょっと出てって貰えるかなぁ?」
「お、おう!そうだな!!」
「これは失礼。無粋な野郎どもは退散するとするか」
一夏は慌てて、ラシャは大げさに両手を挙げて降伏のポーズを取りながら仰々しくカーテンの向こうへ退避した。
カーテンを閉める刹那、ラシャの唇が何事かを呟くように歪んだ。
──何時も見てるヨ。
シャルロットは自らの世界が壊れる音を確かに聞いた。
シャルロットの心に決定的な楔を打ち込んだラシャは、ゆったりとした足取りで水着について相談している千冬達の元へ戻った。あそこまで忠告しておけば、彼女が良からぬことを企てる事は万に一つも無くなるだろう。デュノア社が潰れたとはいえ、お抱えの技術者や貴重なパテントを抱えた権利者の抱き込みを欧州のIS企業が我先にと争っている状況にある。その中でも、大々的に注目されているのはシャルロット・デュノアの身柄と所持している専用機を何処の所属とするかということだ。
現在のフランス政府にとやかく言う資格は最早残っておらず、様々な勢力が彼女を合法・非合法の手段を問わずに狙ってくるであろう。それらに知人を巻き込む訳にはいかない。
第一、あんなお粗末極まりない偽装工作を馬鹿真面目に受け入れてやって来た人間をラシャは微塵も信用していなかった。未だに彼はシャルロットは一夏を籠絡させるために態々バレバレの変装でやって来たのではないかと疑っているほどだ。
少しでも疑わしき行動を取ろうものなら、彼はすぐにでも彼女にナイフを突き立てるだろう。だが、あくまでそれは最終手段。ちょっと残念な可愛いお弟分を極力悲しませたくない彼は、彼女にわかりやすい警告を行うことにしたのだ。
効果は覿面だったようで、いち早く死人のようになってしまった表情で放心していた。あれなら予行演習も必要あるまい。
「おい、ラシャ。お前も何か意見を言ってくれ。何のために連れてきたのかわからないぞ」
「そうですよ!ただでさえラシャさんは職場でも数少ない男性職員さんなんですから、貴重な意見はたくさんあると嬉しいんですよ?」
唐突に自らに向けられた言葉に、ラシャは我に返った。いけないいけない。と、彼は眼前の千冬と山田先生が持っている水着を見た。
千冬が持っているのは二着。山田先生が持っているのは一
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