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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十九話 帰還
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ろうバグダッシュ少佐」
俺の言葉にバグダッシュが頷いた。

「ヤン中佐、貴官はどう思う?」
シトレ本部長の言葉にヤンは躊躇いがちに口を開いた。
「私は、ヴァレンシュタイン少佐は帝国に協力者がいるんじゃないかと考えています」

協力者、その言葉に皆が顔を見合わせた。
「一時間遅れた……。おかしいんです、あの言葉は第五艦隊の動きだけじゃない、帝国軍の行動も知っていなければ出ない言葉です。協力者から情報を得た、そう考えれば彼の神がかり的な予測も説明できます」

バグダッシュが首を振っている。有り得ないということなのか、それとも別に意味があるのか……。
「私が気になるのは少佐が門閥貴族を打倒しようと考えていた事です。少佐は反帝国活動グループの一員なのかもしれない……」

ヤンが俺を見ている。なるほど、そういう事か……。かつてヤンはブルース・アッシュビー元帥の事を調べた。その時アッシュビー元帥が帝国の共和主義者から情報を得ていたと推測した。元帥の華麗な勝利はその情報があったからだと……。元帥の死後、その情報網がどうなったかは誰も分からない。つまりヴァレンシュタインはその情報網の、或いは似たような組織のメンバーという事か……。

「有り得ませんね、ヤン中佐。私もミハマ中尉もずっとヴァレンシュタイン少佐と一緒に居ました。彼が外部と連絡を取り合った形跡は無いんです」
「……」
ヤンが不満そうに顔を顰めた。納得がいかないのかもしれない。確かにヤンの推理には問題点が有る。ヴァレンシュタインの神がかり的な予測は帝国だけに対してではない、同盟に対しても行なっている。

「彼が有能である事には疑問は無いんだな?」
シトレ本部長の言葉に皆が頷いた。
「ならば彼の言っていたミューゼル准将の事だが何か分かったかね?」

皆の視線がバグダッシュ少佐に向かった。
「ラインハルト・フォン・ミューゼル准将、皇帝フリードリヒ四世の寵姫、グリューネワルト伯爵夫人の弟です。現在十八歳、若すぎる年齢から彼の出世はグリューネワルト伯爵夫人が後ろ盾になっているのだろうと情報部は考えていました」

バグダッシュの言葉に皆が頷いている。
「今回、改めて調査課が彼について調べました。彼は軍幼年学校を首席で卒業しています。それ以後も常に戦場に出ている、武勲を上げて出世をしているんです。少佐の言うように天才かどうかは分かりませんが、無能ではないのは事実です。注意する必要があるでしょう……」




宇宙暦 794年 5月 24日  ハイネセン   ミハマ・サアヤ


私達が第五艦隊と共にハイネセンに戻ったのは五月二十一日の事です。首都星ハイネセンはヴァンフリート星域の会戦の勝利で歓喜の嵐の中にありました。無理もないと思います、帝国との戦争は百五十年も
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