第二章
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「一体」
「科挙で出るのはな」
「最後の方が問題になるのか」
「そうじゃ、そこがよく試験の時に出るからな」
「そこを読むとよいか」
「随分読み込んでいると見えるが」
老人は李が日々仕事をしつつ学問に励んでいてもう四書五経は全て暗誦出来るまでに読んでいることも知っていた。
「しかしのう」
「それでもか」
「要点を知るのも大事じゃ」
「試験に出る」
「近頃はそこが問題に出る」
左伝では、というのだ。
「そこを重点的にやることじゃ」
「それがわかるのか」
「わかるから言う」
これが老人の返事だった。
「だから遠慮せずにじゃ」
「ここは」
「そうした場所を重点的にな」
「学べばいいか」
「うむ、信じる信じないは御主次第」
それはというのだ。
「御主に任せる」
「左様か」
「好きにせよ」
「ではそちらも学ぼう」
李は老人の言葉を受けることにしてこう答えた。
「それではな」
「そう言うか」
「うむ、さすれば」
こうして李はこの日左伝のそこも学んだ、そして次の日は大学を学んだが今度は若い書生が出て来て彼に言ってきた。その大きさはやはり親指程だった。
「大学はここじゃ」
その大学のある部分を開いての言葉の言葉だった。
「ここを学ぶのじゃ」
「そうすればか」
「及第を考えるのならよい」
それを目的をして学ぶのならというのだ。
「それならばな」
「そうか、ではな」
「そこを読むことじゃ」
「ではその言葉聞こう」
李は若い書生にもこう答えた。
「それではな」
「そうしてくれるか」
「この話を聞いたのも何かの縁」
小さな若い書生からもというのだ。
「聞こう、御主も昨日の老人も何者か知らぬが」
「ははは、我等のことはひょっとすればわかる」
「ひょっとすればか」
「うむ」
その場合はというのだ。
「運がよければな」
「運がよければか」
「及第するだけ運がよければな」
「やはり及第には運が必要か」
「そうじゃ、まあ御主は運がよい」
書生は李の顔に身体を向けて笑って言ってきた。卓の上にいるその身体は実に小さく吹けば飛ぶかと思われる位だ。
「わし等も助けに来ておるからな」
「では何故わしを助けに来た」
「気まぐれじゃ」
これが書生の返事だった、笑ったうえでの。
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