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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十八話 その死の意味するところ
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愛げの無い敵だ。追撃でもしてくれれば少しは安心できるのだがな。常にこちらの嫌がる事ばかりする。そうは思わんか?』
「同意する」

全くだ。この敵は手強いだけではない、辛辣で執拗なのだ。常にこちらの先を読み苛立たせる。そのくせこちらの息の根を止めようとはしない。まるで猫が鼠を弄ぶような戦い方をする。連中が俺たちに与えるのは不安と絶望だ。今も俺達は未だ見ぬ敵の航空兵力に怯えている。

『ミューゼル准将、連絡艇を呼べ』
「連絡艇?」
『そうだ、その連絡艇で卿は先に艦隊に戻れ』
「……」
戻れ? どういう事だ? 俺に部隊を捨てろというのか? 思わずキルヒアイスの顔を見た。キルヒアイスも訝しげな表情を浮かべている。

『司令部に敵基地の攻撃を頼むのは無理だろう。卿の艦隊でも基地を攻撃するのは不可能だ。対空砲火であっという間に撃破される。だが我々を迎えに来る事は可能なはずだ』

「艦隊を動かすとなれば司令部の許可が要る。彼らがそれを許すと思うか、リューネブルク准将」
『おそらくは許すまい。だから部隊の収容をしやすくするために移動すると言え。それなら司令部も許すはずだ』

何を考えている? リューネブルク。
「しかし、それでは部隊の収容には向かえない。意味が無い……」
『卿は自分の艦隊を出来るだけ本隊から離せ。そして見つからんように上手く隠すのだ』
「!」

『敵の増援が来れば艦隊は上空から一方的に攻撃され全滅する。そして基地は膨大な航空戦力で俺達を攻撃するだろう。地上部隊は壊滅状態になるに違いない。だが生き残る兵も居るはずだ、彼らをこのヴァンフリート4=2から脱出させる艦が要る……』

そうか、そういう事か……、勝つためではなく生き残るために戻れというのか。俺の艦隊は二百隻、それほど多くの兵を収容できるわけではない。だが敵の攻撃を受ければ地上部隊で生き残れるのはその二百隻でも十分に収容できるだけの人数になっているだろう。

「……しかし、部隊の指揮は」
『俺が指揮を執る。幸い敵は追撃してこない、特に問題は無いはずだ』
「……」

『俺達を見捨てるなどと思うな、俺達を救うために艦に戻るのだ。躊躇うな、ミューゼル。俺達は指揮官として部下を一人でも多く救わねばならん、そうだろう?』

キルヒアイスを見た。キルヒアイスが俺に頷く。
「分かった、連絡艇を呼ぼう」
「リューネブルク准将、小官はキルヒアイス大尉です。小官は此処に残り、閣下のお役に立ちたいと思います。お許しを頂けるでしょうか?」

思わずキルヒアイスの顔を見た。しかしキルヒアイスは俺を見ない。通信機を見ている。
「何を言う、キルヒアイス。お前も一緒に……」
最後まで言えなかった。キルヒアイスが首を振って俺を止めた。

「私まで部隊を離れれば、
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