百十四 こめられた想い
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「それはお前が持っていてくれ、ナルト」
「いや、しかし…」
「私は今まで鈴に頼り切っていた。自分の内なる力に目覚めた今も、これからも鈴が手元にあればきっと頼ってしまう。だから、ナルト…」
あえて鈴を手放すと語る紫苑の宣言を、ナルトはじっと聞き入っていた。
紫苑の真剣な眼差しを受け、ややあって頷く。
「それなら、預かっておく。立派な巫女になったら返しに行くよ、紫苑」
今でも十分立派な巫女だと思ってはいたが、それでは紫苑が納得いかないだろうと、ナルトは了承した。ナルトの答えを聞いて満足そうに眼を細めた紫苑は、改めて己の本心を告げる。
「もう運命を呪う言葉は口にせぬ…――巫女は我が使命じゃ」
鬼の国の巫女である事を嘆いていた最初の頃とは違い、紫苑は胸を張ってそう言い切ってみせた。
誇らしげに笑う彼女を眩しげに見やったナルトは、やがて背後から近づいてくる複数の気配を感じ、口許に弧を描く。
鬼の国で幽霊軍団の足止めを頼んでいた全員の気配を振り返りもせずに察し、内心安堵していたナルトは、紫苑の話を正直なところ真剣に聞いてはいなかった。
「そしてこの力は次なる巫女へと伝えていかなければ…どうじゃ、ナルト?」
「うん?」
急に話を振られ、わけがわからないがとりあえず返事したナルトの隣で、紫苑は若干頬を染めながら顔を俯かせた。
ややあって、思い切ったように頭を上げ、「お前、力を貸さぬか!?」と上擦った声を上げる。
期待が込められた紫苑の問いかけに応えたのは、二人の見知らぬ赤髪少女の冷たい眼だった。
「……へぇ〜…」
「やけに大胆な発言してくれんじゃねぇ〜か…」
危ないところでナルトと紫苑の間に割り込んできた香凛と多由也。
突然邪魔してきた二人に困惑した紫苑がナルトを探すと、彼は白と君麻呂に挟まれていた。しかも何故か耳を押さえられて何も聞こえないようにされている。
自分の耳を手で押さえる白と君麻呂を、ナルトは戸惑って交互に見た。
「白、君麻呂…何故俺の耳を押さえるんだ?」
「ちょっと雑音が…」
「それに今からとてもうるさくなりますので…」
いつの間にか自分の周りに、白と君麻呂を始め、再不斬・多由也・次郎坊・水月・香燐・ドス・キンが勢揃いしている事実を知って、ナルトは驚くよりも先に彼らの安否を再度眼で確認した。その間にさりげなく、白と君麻呂がナルトを女の修羅場から遠ざける。
現状把握が出来ず、ナルトは再不斬に視線を向ける。返ってきたのは、同情の眼。
三竦みになって睨み合う香凛・多由也・紫苑から立ち込める黒雲は、火山の噴火口から立ち昇る黒煙よりも黒く渦巻いていた。
牽制し合う女達の膠着状態は、封印の祠があ
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