百十四 こめられた想い
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をもたげた。その様は、寸前まで紫苑を呑み込んでいた闇が口を開けて苦しげに悶えているようだった。
洞窟全体が揺れ動く。地中の胴体を持ち上げ、その場から逃げ出そうとする【魍魎】を、ナルトは冷たく見下ろした。
「遅い」
直後、急降下する。
黒い羽根を撒き散らし、【魍魎】の口から覗き見える闇へ、ナルトは紫苑を抱えたまま、落ちてゆく。
最期の足掻きとばかりに龍が触手を伸ばしてナルト達を払いのけようとしたが、光に触れた途端、じゅっと音を立てて弾けた。
眩い閃光が迸る。あまりの眩しさに紫苑が思わず眼を瞑ると、ナルトの背から生える漆黒の翼が彼女を守るように包み込んだ。
「―――【螺旋丸】!」
自分を守る黒き羽根の合間から、紫苑は聞いた。
巫女の長年の敵である妖魔【魍魎】の断末魔を。
紫苑を抱える手のぬくもりを感じながら、彼女は静かに涙した。ナルトの胸に顔をうずめる。
運命の呪縛から解き放たれた歓喜の涙と、【魍魎】の中に取り込まれていた母・弥勒との別れの涙を。
「母様…」
【魍魎】の肉体が光の中でチリヂリに崩れてゆく。同時に、衝撃で洞窟を支えていた岩盤が崩壊した。
洞窟全体が揺らぎ、天井や岩壁さえも溶岩の海へ落盤してゆく。
封印の祠のある岩山が砕け、その中から溶岩が噴出した。山のあちこちから勢いよく噴き出した溶岩は、黒煙を吐き散らす。みるみる勢いを増し、やがて山の頂から真っ赤な炎が飛び出した。
天を焦がすほどの大噴火により、封印の祠周辺は崩壊する。
真っ黒な噴煙に雑じり、漆黒の翼がひそやかに空を舞った。
高く立ち昇る黒煙が朝焼けを灰色に染める。
その光景を呆然と遠くから見つめていた白と君麻呂は、自分達を安全な場所へと運んだ相手をじろりと睨んだ。
「何のつもりだ?」
封印の祠前の荒野にて、幽霊軍団の兵達と戦っていた白と君麻呂は、突如洞窟から感じた物凄い寒気により、気を失ってしまった。
その寒気はナルトの殺気によるものだったが、対峙していた数多の幽霊軍団が盾となったので、二人は気絶だけで済んだのだ。
そして気がつけば、封印の祠がある岩山から離れた場所で倒れていたのである。
自分達を祠の入り口から此処まで運んだ彼らを、白と君麻呂は訝しげに見やった。
何故なら相手は巫女の館を襲撃した、【魍魎】、否、黄泉の部下…つまりは敵である存在だからだ。
黄泉の配下である四人、その内の二人から、白と君麻呂は距離を取る。警戒態勢を取る白と君麻呂は、再び背後から聞こえてきた噴火の音で、ハッと顔を上げた。
「ナルトくん!」
「ナルト様!」
同時に
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