百十四 こめられた想い
[4/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
に受けるのは、ナルトの背中。
純白の羽織とは対照的な漆黒の両翼。それが、ナルトの背から生えていた。
真っ二つに裂けた赤い海の中心で、漆黒の翼をはためかせ、金の髪を靡かせる。
その光景は異様であり、そしてどこか幻想的でもあった。
妖魔【魍魎】の影響により、黎明の巨躯から生えた黒き翼。それだけをナルトが自分の中から外に出したのだ。
黎明の力を借り、黒い羽根を背中から生やす。両翼に仰がれ、溶岩が波打った。
大きく広げた両翼から放たれる強風が赤く燃え盛る水面を分断してゆく。ナルトの襟元に差し込まれた鈴が、りぃん、と美しく鳴り響いた。
ナルトと紫苑を接近させまいと数多の龍が長い首を伸ばし、巨大な口を開く。先ほどまでは取り込もうとしていた相手から恐怖を覚えたのだろう。数多の龍がナルト目掛けて押し寄せる。
それを軽やかに避け、溶岩ギリギリの位置を高速で飛ぶナルトに、紫苑はしがみつく。
特に内側から破壊されかけた紫苑に対し、【魍魎】は警戒して決して近づけまいとした。
その努力むなしく、龍の猛攻を掻い潜ったナルトは、目的地に辿り着く。
紫苑が呑み込まれていた【魍魎】の体内。混沌の闇であり、【魍魎】の肉体がある龍の根元。
妖魔【魍魎】の真上で、翼を広げ、ナルトは宙に浮かぶ。聊か不本意だ、といった表情で、彼は襟元から鈴を抜いた。
(本当はこの術を使うのは憚られるんだが…)
しかしながら、命中率、威力、周囲への被害を最小限に止めるに相応しい技は、現在思いつく限り、この術だけだろう。
ほんの一瞬の躊躇の後、龍の雄叫びに促され、ナルトは鈴を握った手を掲げた。その手の上で、鈴がナルトのチャクラを収束し、光を帯びてゆく。
紫苑もまた手を差し出し、ナルトの手の上に重ねると、鈴に力が集まってゆく感覚がした。
「紫苑。お前の気持ちを…」
ナルトと紫苑の重ねた手から光が溢れてゆく。
「思いを…」
ナルトに促され、紫苑は手中に意識を集中させた。鈴の放つ光が増す。
「―――心をこめろ」
ナルトのその一言で、紫苑の感情も思いも全てが決壊した。
運命に縛られていた事からの解放を望んで、紫苑の力が一気に溢れ出す。その力は鈴の中に吸収され、一抱えもある光の玉へと成長した。
ナルトと紫苑の手の上で大きく輝く光。その中心で、紫苑の母の形見である鈴が、昔と変わらぬ美妙な音を響かせる。
光輝く力を真上にして、ようやく危機感を覚えた【魍魎】の肉体が地の底からその姿を露わにした。数多の龍は単なる触手であり、それよりも遥かに巨大な龍が頭を出す。
祭壇を突き破って咆哮する【魍魎】は、先ほどまでナルトを喰らおうとしていた龍の百倍ほどの大きさの鎌首
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ