第21話(改2.0)<白い傷>
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た。
「そういや当時、舞鶴の提督は穏健派で頑張ってたが横須賀は精神を病んで退任したと聞いた」
頷く青葉さん。
(だから舞鶴の提督も、そのまま指揮を執っていたら危なかったかも知れない)
「でも」
彼女は改めて私を見つめた。
「司令は明らかに『穏健派』ですね」
「ありがとう、と言って良いのかな?」
「えへへ」
その笑い声で私の心が、また軽くなった。不思議な子だ。
「その舞鶴で何か?」
穏かな口調で聞いてくる青葉さん。私の心の扉を開ける感覚だが悪くはなかった。
「当時、過労で倒れた提督に代わって私が初めて単独指揮を執った」
「はい」
静かな相づち。私は続ける。
「既に通常の艦艇は壊滅状態。高練度の艦娘も軒並み傷付いていた。私は仕方なく手練れの軽巡と新人の駆逐艦で部隊を組み出撃させた」
「はい」
「その軽巡は、いつになく出撃を渋っていたが私は押し出した」
「冬の日本海ですよね」
窓の外で穏やかに輝く日本海を見つめながら彼女は念を押す。
「あぁ。普通の出撃でも躊躇する。しかも通常艦の十分な援護もなく艦娘だけの抜錨だ」
「……」
無言の彼女。
私は続ける。
「だが敵も悪天候下で次々と攻撃してくる。既に前衛が破られ放置すれば鎮守府に攻めて来そうな勢いだ。軍令部からも陸に近づけるなと指示が出て、かなり焦った。もし敵が上陸したら最悪の本土決戦、陸軍が出てくる。上は、それも嫌だった」
「分かります」
「恐らく敵もギリギリで必死だった」
「そうですね。確か、その後しばらく敵の攻撃が緩くなる時期がありました」
「そうなのか?」
「はい」
私は当時の状況を整理した。
艦娘たちが出撃して敵の様子が報告された。相手は潜水艦を主力とした熟練部隊。しかも悪天候でも正確な敵の射撃。明らかに高性能な電探を積んでいた。
「最初から性能が違い過ぎた」
「はい」
悪天候で無線も通じ難い。状況把握も手間取る。経験不足の私には、すべて判断が後手に回った。混乱状態寸前だった。
断片的に入る艦娘の叫び声。しかし当時の士官は構わず行けという。良心が痛んだ。
結局、撤退の判断は手遅れになった。戦闘は敵の圧勝。私は軽巡と駆逐艦を数隻、冬の日本海に沈めてしまった。
「ハッキリ、全滅だよ」
私は自分自身に突き放すように言った。
「……」
青葉さんは黙っている。
その艦娘部隊が全滅すると同時に敵は撤退したらしい。安堵しつつも、天候を見て索敵機を飛ばした。破片の浮かぶ夕暮れの日本海。現実の夕日と想像する光景が被さってゾッとする美しさが強く印象に残っている。
彼女は要所、要所でメモを取っている。私は、こんな記録は記事に成らないだろうと思って特に止めなかった。
「や
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