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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十六話 疑惑
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ヤン中佐でした。一人一室ですが私達の部屋は私、ヴァレンシュタイン少佐、バグダッシュ少佐の順で並んでいます。どうやら三部屋無理を言って用意してくれたようです。

部屋に入ろうとしたときでした。ヴァレンシュタイン少佐が私達に話しかけてきました。
「少し皆さんにお話したい事があるんです。私の部屋で話しませんか? ヤン中佐も一緒に」

珍しい事です、少佐が私達を誘ってきました。思わず少佐を見ると少佐は笑みを浮かべてこちらを見返してきました。ヴァンフリート4=2を離れてヴァレンシュタイン少佐も少し気分が軽くなったのかもしれません。

私、バグダッシュ少佐、ヤン中佐の順で部屋に入りました。そして最後にヴァレンシュタイン少佐が入りドアに背を預ける形で立ちます。部屋の中にはベッドと簡易机と椅子があります。私は椅子に、バグダッシュ少佐とヤン中佐はベッドに腰を降ろしました。

「ヤン中佐、教えて欲しい事が有るんです」
「何かな、少佐」
「第五艦隊のヴァンフリート4=2への来援が私の予想より一時間遅かった。ヤン中佐、何故です?」

ヤン中佐の表情が強張るのが見えました。
「何の話かな、意味が良く分からないが」
「ヴァンフリート4=2への来援をビュコック提督に要請してくれたのか、私との約束を守ってくれたのか、そう聞いているんです」
「……」
「それとも私達を見殺しにしようとした、そういうことですか?」

部屋に緊張が走りました。私は良く分からず周りを見るばかりです。ヴァレンシュタイン少佐はもう笑みを浮かべてはいませんでした。冷たい視線でヤン中佐を見据えています。そして私の目の前には蒼白になるヤン中佐が居ました。



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