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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十六話 疑惑
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ないかもしれん。しかし貴官が死んだら同盟にも悲しむ人間が居るという事を忘れんでくれ、私だけではない、この基地に居る皆がそう思っている……」

セレブレッゼ中将がまた歩き始めた。難しい事を言ってくれる、俺に死ぬなとか味方だとか……。ヤンへの疑惑が事実なら、おそらく命じたのはシトレだろう。軍のトップが俺を抹殺したがっている。俺に関わるのは危険なのだ。

俺はポケットから認識票とロケットペンダントを取り出した。ジークフリード・キルヒアイス、帝国暦四百六十七年一月十四日生まれ……。認識票にはそう記載されている。そしてペンダントには赤い髪の毛が収められていた。

両方死ぬか、両方生きていれば未だましだった。だが現実は最悪な形での勝利だった。キルヒアイスが死にラインハルトは生きている。これが本当に勝利の名に値するのかどうか、俺にはさっぱり分からない。分かっている事はラインハルトは決して俺を許さないだろうという事だ。

死に急いでいるつもりは無い。しかし死のほうが俺に近付いてくるだろう。ポテトサラダを見詰めた。食べなければならん、どれほど食欲がなかろうと食べなければ……。俺は未だ死ねんのだ、少しでも生き延びる努力をしなければ……。だが、何のために生きるのだろう、溜息が出た。



宇宙暦 794年 4月25日  ヴァンフリート4=2  ミハマ・サアヤ



「寂しくなるな、貴官が居なくなると」
「閣下」
セレブレッゼ中将とヴァレンシュタイン少佐が話をしています。中将は本当に名残惜しそうですし、少佐は少し照れたような、面映そうな表情をしています。

私は中将を羨ましく思いました。今では見る事が出来なくなってしまいましたが以前は時折私にも見せてくれた表情です。少佐はまだそういう表情を浮かべる事が出来る、少し寂しいけどそれだけで満足するべきなのかもしれません。

ヴァンフリート4=2の地上戦はヴァレンシュタイン少佐の言葉どおり、帝国軍にとって地獄になりました。地獄から生還できた帝国軍は一割に届きません。そして捕虜も居ません、徹底的な絨毯爆撃攻撃と地上掃討によって捕虜になる前に皆戦死しました。

戦が終わった後、少佐は以前にも増して無口になりました。そして周囲に関心を払わなくなったと思います。一人で何か考え込み、時々溜息を漏らしています。食事も余り取っていません。余程気にかかる事が有るようです。身体を壊さなければ良いのですが……。

今回の戦い、同盟軍が勝利を得られたのはひとえに少佐の働きによるものです。誰もがそれを分かっています。皆が少佐と話をしたい、親しくなりたいと考えていますが少佐が暗い表情で考え込んでいるので話しかける事が出来ません……。私も少佐に話しかける事が出来ずにいます。もしかするとやり過ぎたと考えているのかもしれ
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