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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十六話 疑惑
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。
「私はいずれハイネセンに戻る事になるだろう」
「後方勤務本部の次長になられると伺っております。御慶び申し上げます」
「ああ、有難う。いや、まあ」
「?」
セレブレッゼの表情には困惑というか照れのようなものが有る。
「どうかな、少佐。私の直属の部下にならんか。そうなれば貴官も前線に出ずに済む、帝国軍と直接戦わずに済むだろう。それに後方勤務本部には後方支援の能力だけではなく用兵家としての才能もある人物が必要だ」
「……」
「どうかな、少佐。私のところに来れば、今の様に苦しまずに済むと思うのだが」
「有難うございます。ですが小官の事はどうか、ご放念ください」
「少佐?」
「今回の小官の人事にはシトレ統合作戦本部長の意向があるようです」
「シトレ本部長?」
「ええ、本部長は小官をこれからも帝国との最前線で使おうとするに違いありません。閣下が小官を庇おうとすれば閣下のお立場が悪くなります」
「……」
セレブレッゼ中将の顔が暗くなった。軍のトップであるシトレ元帥を相手にする、出来ることではない、俺がどういう立場にあるかようやく分かったらしい。
「これからの同盟には閣下のお力が必要となります。どうか小官の事はご放念ください」
「……そうか、残念な事だ……。ヴァレンシュタイン少佐、私の力が必要な時は何時でも言ってくれ。私は貴官の味方だ」
「……」
「貴官が此処に来てくれた事には感謝している。貴官がいなければ私は戦死するか捕虜になっていただろう、この基地が守られたのは貴官のお蔭だ」
「……そのような事は」
セレブレッゼ中将が首を横に振った。
「私には用兵家としての能力は無かった。だから後方支援に進んだ。後方支援がなければ軍は戦えん、我々こそ軍を支える力だと自負した。だが前線での武勲が欲しくなかったと言えば嘘になる。その想いを貴官が叶えてくれた。しかもこれ以上はないという勝利でな。礼を言わせてくれ、有難う、少佐」
セレブレッゼが俺に頭を下げた。
「お止め下さい、閣下。小官は当然の事をしたまでです。むしろどこまで閣下を御支えする事が出来たのか、心許なく思っております」
セレブレッゼが俺に笑顔を見せた。五十近い男の笑顔なのにどういうわけか可愛いと思える笑顔だった。
「貴官は私を十分に補佐してくれた。少佐、私にはハイネセンに孫がいる。その子に今回の戦の事を話してやるつもりだ。貴官が私を誠実に補佐してくれた事、それ無しでは勝利は得られなかった事をな。あの子はきっと喜んでくれると思う」
そう言うとセレブレッゼ中将は席を立った。そして出口に向かって歩き始めたが直ぐに立ち止まった。
「ヴァレンシュタイン少佐、死に急ぐなよ。私はそれだけが心配だ。この国は貴官にとって決して居心地の良い場所では
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