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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十六話 疑惑
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の食堂で食事をしているのだがフォークでポテトサラダを突くばかりで少しも口に入れる気になれない。溜息ばかりが出る。

どう考えてもおかしい。第五艦隊がヴァンフリート4=2に来るのが俺の予想より一時間遅かった。原作ではミュッケンベルガーがヴァンフリート4=2に向かうのが三時間遅かったとある。三時間有れば余裕を持って第五艦隊を待ち受けられたということだろう。

艦隊の布陣を整えるのに一時間かけたとする。だとすると同盟軍第五艦隊は帝国軍主力部隊が来る二時間前にはヴァンフリート4=2に来た事になる。だがこの世界では同盟軍が来たのは帝国軍主力部隊が来る一時間前だ。

二時間あればヴァンフリート4=2に停泊中のグリンメルスハウゼン艦隊を殲滅できた。行き場を失ったラインハルトも捕殺できたはずだ……。だが現実にはラインハルトは逃げている……。

俺の記憶違いなのか? それともこの世界では同盟軍第五艦隊が遅れる要因、或いは帝国軍が原作より早くやってくる何かが有ったのか……。気になるのはヤンだ、俺が戦闘中に感じたヤンへの疑惑……。俺を殺すために敢えて艦隊の移動を遅らせた……。

否定したいと思う、ヤンがそんな事をするはずがない。しかし俺の知る限り原作とこの世界の違いといえば第五艦隊のヤンの存在しかない……。奴を第五艦隊に配属させたのが失敗だったという事か……。

「少佐、ヴァレンシュタイン少佐」
気がつくとテーブルを挟んで正面にセレブレッゼ中将が座っていた。どうやら俺はポテトサラダを突きながら思考の海に沈んでいたらしい。

シンクレア・セレブレッゼ、今回の勝利を一番喜んでいるのは目の前のこの男だろう。次に行なわれるイゼルローン要塞攻略戦で余程のヘマをしない限り後方勤務本部の次長になる事は間違いないのだ。

この男の将来は確定された、いずれは後方勤務本部の次長から本部長へとなり後方支援業務のトップになるのだろう。まあロックウェルが後方勤務本部の本部長になるよりはましなはずだ。

「申し訳ありません、閣下。少し考え事をしておりました」
「構わんよ、少佐。それより邪魔をしてしまったかな」
「いえ、大丈夫です。もうそろそろ終わりにしようかと考えていました」

セレブレッゼが困惑したような表情で俺とテーブルの上に有る食事の乗ったトレイを見た。中将が困惑するのも無理はない、殆ど手をつけていない……。だがどうにも食べる気になれない……。

「少し話しをしたいのだが、構わんかね」
「はい」
「こんな事を言うのはなんだが、貴官は帝国との戦争を望んでいない、そうではないかな?」
「……」

俺は周囲を見た。傍には誰もいない、この男が人払いをしたのだろう。遠巻きに何人かがこちらを見ているだけだ。俺が返事をせずにいると中将は一つ頷いて話を続けた
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