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自然地理ドラゴン
二章 追いつかない進化 - 飽食の町マーシア -
第27話 湖 − それは陸水が生み出した儚き地形 −
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向き合うことを求めた。

 冒険者としては出しゃばり過ぎな提案であったが、副町長は二点とも快諾した。



 * * *



 翌日。

 シドウは再びドラゴンに変身し、マーシアの町の上空を飛んでいた。
 その背中に乗っているのは、三名の人間。

 先頭がティア。一番後ろにアラン。
 真ん中は……十字の入った濃紺の僧衣を着た、おかっぱ頭の少年。聖堂の治療所で働いている薬師の責任者、トーマスだ。

 この飛行、企画したのはティアである。

「どうせもうこの町では変身見られたんだし。いいでしょ?」

 ということらしい。
 しかし、トーマスを乗せることについては、アランの発案だった。

「あの少年にとって、空を飛ぶことは大きな意味があると思います。シドウくんがよければですが、ぜひ」

 とのこと。
 シドウとしては特に反対する話ではないため、了承していた。



 ぐるっと町周辺の空を回り、現在はほぼ東向きに飛んでいる。

 下には、ほぼ円形に見える、壁に囲まれたマーシアの町。
 前方には、それを中心とする水系がこの町を支えてきたと言ってもよい、大きな湖。地上で見る時と違い、対岸がうっすらと見えている。
 後方は、白く霞んだ巨大な岩肌のカーテン。旧魔王城のあるグレブド・ヘルだ。

「問題のない範囲で少し高めに飛んでください」

 そのアランのリクエストにより、少しだけ高めに飛んでいた。
 あまり高く飛びすぎると、グレブド・ヘルにいる人型モンスターの残党に目撃される可能性があるため、岩肌のカーテンの上端よりは下である。

 グレブド・ヘルでも、もうドラゴンのような最上級モンスターは全滅したことになっているはずである。できれば見られないほうがいい。



 ドラゴン姿になると、耳の感度もかなり良くなる。
 背中の三人が何を話しているのかは、シドウにも聞こえていた。

「少年。どうですか? 気分は」
「高くて少し怖いです」
「えー? 命綱つけてるじゃない。情けないなー」
「つけていても、怖いですよ……」

 ティアとアランは平気のようだが、トーマス少年はそうではないようだ。
 彼はドラゴン姿のシドウを見て一度失神し、ティアに活を入れられて起こされてから乗っていた。
 ドラゴンに対する恐怖に、高所の恐怖。ダブルパンチだったのかもしれない。

「ふふふ。素直な感想ですね。では、空から見た町はどう見えますか?」
「ええと、少し小さく見えます」
「では、聖堂の付属治療所は?」
「……ものすごく、小さく見えます」

「そうですね。あの聖堂はもちろんですが、この町だって、空から見れば決して大きくはないのです。この感覚、ずっと忘れないようにしてくださいね
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