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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十五話 心が闇に染まりし時
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たとえ現状で帝国軍の来援が来て基地が落ちる事が有ってもラインハルト達の昇進は無い。

それにしてもあそこで兵を退いたか。リューネブルク、ラインハルト、彼らの立場からすれば兵は退きにくかったはずだが、それでも兵を退いた。多分連中は俺の考えをほぼ察しているに違いない。さすがと言うべきか、それとも当然と言うべきか……。

残念だが基地の安全は未だ確保されたわけではない。味方艦隊がヴァンフリート4=2に来ない。本当なら第五艦隊が来るはずだが、未だ来ない……。第五艦隊より帝国軍が先に来るようだと危険だ。いや、危険というより必敗、必死だな……。

原作では同盟軍第五艦隊がヴァンフリート4=2に最初に来た。第五艦隊司令官ビュコックの判断によるものだった。念のためにヤン・ウェンリーを第五艦隊に置いたが、失敗だったか……。原作どおりビュコックだけにしたほうが良かったか……。

それともヤンはあえて艦隊の移動を遅らせて帝国に俺を殺させる事を考えたか……。帝国軍が俺を殺した後に第五艦隊がその仇を撃つ。勝利も得られるし、目障りな俺も消せる……。有り得ないことではないな、俺がヤンを第五艦隊に送った事を利用してシトレあたりが考えたか……。

ヤンは必要以上に犠牲を払う事を嫌うはずだ。そう思ったから第五艦隊に送ったが誤ったか……。信じべからざるものを信じた、そう言うことか……。慌てるな、此処まできたら第五艦隊が来る事を信じるしかないんだ。

ヤンが信じられないならビュコック第五艦隊司令官を信じろ! 士官学校を卒業していないにもかかわらず、戦場で武勲を挙げる事だけで艦隊司令官にまで出世したあの老人を信じるんだ。あの老人なら味方を見殺しにするような事はしない。

焦るな、俺が焦れば周囲にも焦りが伝染する。第五艦隊が来るのを信じて耐えるんだ。今俺に出来るのは味方艦隊の来援を信じて待つ事だ。ラインハルトのことを考えろ、俺はラインハルトに勝った。歴史を変える事に成功したんだ。きっと上手くいく、そう信じて味方の来援を待つんだ。少し休め、お前は疲れている……。



宇宙暦 794年 4月 7日  ヴァンフリート4=2  ミハマ・サアヤ



「上空に味方艦隊来援! 第五艦隊、ビュコック提督です!」
オペレータの声が司令室に響きました。それと同時に司令室に大きな歓声が上がります。来ました、第五艦隊がきたのです!

ようやく味方の来援が来たといっていいでしょう。敵の地上部隊が退却してから十時間近くが経っています。この間基地は帝国軍の来援と同盟軍の来援、どちらが先に来るかで不安に晒されました。落ち着いていたのはヴァレンシュタイン少佐だけです。

何度もセレブレッゼ中将は味方は何時来るのかと問いかけました。それに対し少佐は“ビュコック中将は歴戦の名将です
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