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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十五話 心が闇に染まりし時
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ーンに映るヴァーンシャッフェ大佐が吼えた。しかしヴァレンシュタイン少佐の口調は変わらなかった。
「ローゼンリッターは帝国軍の侵攻から基地を守った。それで十分に連隊の名誉は守られるはずです。それ以上は欲張りですよ、大佐」

ヴァーンシャッフェ大佐が口篭もった。
「……しかし、艦隊が来るのは何時になるか分かるまい。今すぐ攻撃するべきではないのか」

ヴァーンシャッフェ大佐の言葉にヴァレンシュタイン少佐が苦笑した。
「敵の攻撃部隊が艦隊に戻るまで三十時間はかかります。そして戦略爆撃航空団は三十分で敵艦隊の停泊地にまで行けます。時間は十分に有る、問題は有りません」

勝負有ったとセレブレッゼ中将は見たのだろう、ヴァーンシャッフェ大佐を押さえにかかった。
「そういうことだ、大佐。貴官と貴官の連隊は十分に戦った。その働きには感謝している。現状を維持し、部隊に休息を与えたまえ」
「……はっ」

不承不承では有るがヴァーンシャッフェ大佐は頷いた。スクリーンから大佐の顔が消える。それを見届けてからセレブレッゼ中将が溜息混じりにヴァレンシュタイン少佐に声をかけた。

「良く抑えてくれた、ヴァレンシュタイン少佐。連中の気持は分かるが、ああまでむきになられるとどうもな……。私にはついて行けんよ……」
「大佐もお辛い立場なのでしょう。ですが反転攻勢は味方増援が来てからだと考えます」

セレブレッゼ中将がヴァレンシュタイン少佐の言葉に頷いた。少佐の言葉が続く。
「小官の予測では第五艦隊が最初にこの地にやってくるはずです。それまで我々に出来る事は警戒態勢を維持する事しか有りません。閣下、お疲れでしょう、少しお休みください」

セレブレッゼ中将は少し迷ったが少佐の勧めに従った。司令室を出る直前、少佐に対して“貴官も適当に休め、あまり根を詰めるな”と言い、ヴァレンシュタイン少佐も“有難うございます”と答えた。

セレブレッゼ中将が司令室から出るとヴァレンシュタイン少佐は司令室に居た人間に交代で休むようにと伝え、自分は椅子に腰掛けた。そして何か有ったら直ぐに起すようにと言って身体を背もたれに預け、目を閉じた。

眼を閉じたヴァレンシュタイン少佐の横顔が見える。亡命当初に比べてかなりやつれているようだ、そして疲労の色も濃い。此処最近、少佐の表情が厳しく見えたのはその所為も有るのだろう。我々がそこまで追い詰めてしまったという事か、それとも自ら追い詰めたという事か……。



宇宙暦 794年 4月 6日  ヴァンフリート4=2  エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



とりあえず地上部隊からは基地を守った。此処までは予定通りだ。ラインハルトもリューネブルクも今頃は悔しがっているだろう。どうやら俺は歴史の流れを変える事に成功したらしい。
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