暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
弱きは言い訳にならず
[6/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
―だが。

それでも、彼はまだ、あきらめてはいなかった。

「まだ、だッ!まだ、手はあるッッ!!」

血の吐くような叫び。

しかしその瞳は、まだ焔を宿している。

スプリガン領主は剣のように鋭く左手を振り、領主専用の巨大なシステムメニューを出現させた。無数のウインドウが階層を成し、光の六角柱を作りだしている。

ファナハンは血走った眼でその中から一枚のタブを引っ張り出し、古参らしい素早いスピードで指を走らせた。

「舐めるなよ。投票の結果が発表されるその瞬間まで、領主権限は俺にある!領主が持つ権利は、何も税率の上げ下げだけじゃない。領民の追放権だってあるんだ!傀儡の領主を生まれさせるぐらいならば、その前に脱領者(レネゲイド)として追放すればいい!!」

脱領者――――領に属することなく、自由奔放を貫く彼らは当然の如く選挙戦には立候補できない。

それも当然だ。税を払うこともなく、どころか他領の者に手を貸すヤツらが上に立つなど、あってはならない。

激甚の感情に顔を歪める男は、ギヂリと奥歯を噛みしめる。

―――そうだ。あの《矛盾存在(アノマリー)》のように、その腕を種族に捧げないヤツなど……!!

噂では、あの世界樹のグランド・クエスト攻略にも関わっていたと言われている、とある黒尽くめ(ブラッキー)野郎を思い起こしながら、ファナハンは出現した属領者リストをスクロールしていく。

―――どこだ!?あの立候補したクソッタレをさっさと追放すれば、まだ間に合う!!ケットシーの企みは費えるんだ!!

追い詰められた者特有の、ガチガチに強張った顔でアルファベットの羅列を追う領主の耳に、悠々と煙管を吸う狐耳の麗人の声が入ってきた。

魔法によって不自然なまでにクリアに聞こえるその声は、いっそ突き刺すようにこう言った。



「やらせると思うたか?」



「…………なッ!!」

その言葉の内容が正常に脳で処理される直前、ファナハンは血を吐くような呻き声とともに手を止めた。

否、止めざるを得なかった。

なぜなら、領主のみに閲覧可能なシステムメニュー。そこに浮かび上がったスプリガン領に属するプレイヤーリストには、同じ綴り、同じ文字でびっしりと、こう表記されていた。

【Lenhoh】

憎いまでのケットシーの英雄の名前が、そこにはあった。

その数、数千人以上。

表情を歪めることも忘れ、両手を変な位置で浮かしたまま硬直するファナハンの精神を「あっははは!」という悪魔の嗤いが抉り取っていく。

「ウチの隊長の名前を借りたんは、さすがに格好つけすぎたか?割と良い案やと思うんやけどなぁ。なぁ、領主サマ?どーぞ追放してとくれやす、確かにそん中に当たりがおるで。ただし、
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ