暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
弱きは言い訳にならず
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とない、選挙戦の票の推移を記す特大ウインドウだ。立候補者のアバター、その胸から上(バストアップ)画像が大きく張り出され、その下にごてごてしたフォントで獲得票が表示される仕組みだ。

ファナハンの獲得している総票数は、三千五百二。無論、投票そのものをしていないプレイヤーもいるが、それにしても過去有数の獲得票だ。

そして対する、ヒスイにサクラと呼ばれた少女の顔写真の下の数字は――――

既に、四桁に昇っていた。

「く、そッ!」

「おーおー、結構票獲ってるやんか。口だけやなかったそうやなぁ、領主君?これやったら、あてらが用意した二千五百人じゃ、ちと足りんなぁ」

その言葉に、ファナハンの視線は再度ジックラドの上空へと向かう。

さきほどまでひっきりなしにアバターを吐き出していた湧出エフェクトは、すでにそこまでない。点々とアバターを吐き出しているだけだ。

―――票数が及ばなかったら、後十五分で再び俺が領主に固定されるッ!そうなれば、来期の選挙戦まで領主の座は揺るぎはしない!!

追い詰められた鼠が、僅かな希望に口角を引き上げる。

だが、彼は知らない。

ケットシーが、()()()()()()()()()で勝算をつけているはずもないことを。

「そんじゃ――――第二陣行こか」

「…………………は?」

ヒスイの言葉が耳に届くまで、いったいどれだけかかったろう。

彼女は嗜虐的(サディスティック)な笑みを口元に湛え、くるりと上機嫌に煙管を回す。

「いんやぁ、あんまり一度に入らすとサーバが心配やろう?だから、全部で四分割したんやけど。どうや?優しい配慮やろ?」

言うや否や、彼女は傍らに控える執政部のプレイヤーと思しきアバター達に目配せする。

彼女らはあらかじめ開いておいた大量のウインドウに対し、ホロキーボードを使ってタイピングした。

その数秒後。

再び、溢れんばかりの光が降り注ぎ、人の波とも形容できる大洪水が上からバケツをひっくり返したように出現した。

その数は、先刻の第一波に負けずとも劣っていない。

数字の上での優位性は、あっという間に剥ぎ取られた。

「――――ッ」

ずしゃ、という音が、力の抜けた膝が石畳の地面と接触する音だと理解するのに、ファナハンは五秒ほどかかった。

視界が狭窄する。

ノドが変な風に震えている。

頭は、正常な反応を返してはいなかった。

だが、それでも現実はどうしようもなく厳然と、そして冷然として進行する。

異常な心拍数に、装着しているアミュスフィアが警告音を鳴らすが、それさえもファナハンはどこか遠い音のようにくぐもって聞こえた。

―――
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