暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
弱きは言い訳にならず
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の瞳の先では、雪崩のように湧いて出た、大量のスプリガンのサブアカウント持ち達が、一様に同じウインドウを開いているところだった。

その様子を見、愉しげに目を細めながら、麗人は言う。

「まぁ、そないケンケン言うなや。残り二〇分弱……、あんさんの《信頼》とあてらの《数》、現実的なのはどちらか勝負ゆうだけの話やで」

それは、投票ウインドウ。

たとえ本アカではなく、たった今取ったばかりのサブアカウントであろうが、スプリガンとして生まれた以上、領主直々に追放されない限りは属領者――――選挙権、つまり清き一票を投じることはできるのである。

彼女らは、ウインドウ内に新たに表れたアバター名をクリックする。

傀儡の王を祭り上げるために。

「――――ッッ!!!?」

「……あんだけご大層なことしでかすくらいや」

首を傾け、ヒスイは宣言するように、宣伝するようにこう言った。

「自分トコの領民の心くらい、掌握してるよなぁ?」

もはや確定だ。

彼女ら――――ケットシーが、今回スプリガンを種族ごと潰すのに用いた手段、そのえげつない様相が。

総選挙。

各領で一斉に領主立候補者の中から、属領者によって次期領主が決定される一大イベントだ。一週間に渡る投票期間の後、システム的な開票によって一瞬で領主が決まる。

そこに、ケットシーは強引と言う他ない手段で立ち入った。

大量の領民に新規(サブ)アカウントを作らせ、新たにスプリガン領民としてダイブさせ、新たな領主を立候補させるという。

まさしく、大種族だけに赦される強力無比な一手。

これに対抗できる手を、ファナハンは咄嗟には思いつかない。

領民として誕生する以上、シナルの街中にいる限り領主自身にも手出しはできない。彼女らのHPは、システム的に保護されているのだから。

そしてケットシー側に、完全な傀儡の領主を入手されるということは、スプリガンにとって、マズいなんてモノじゃない。

それこそ、スプリガンという種族の存亡がかかっている。

領主の特権は多岐に渡るが、その中には税率変動権もある。領に属するプレイヤーが戦闘に勝利した際に得る(ユルド)の一部を自動的に税として巻き上げる納税システムだが、ただでさえ少量でも常から不満の声があるそこに、好き勝手に手入れされたら、誰もスプリガン領に残る道を選ぶはずがない。

それこそ、属領者が一人もいなくなる、なんて最悪なシナリオだってありうる。

立ち尽くすファナハンの頭上。

ジックラドの天頂部に、縦だけで十メートルは超すかもしれないほどの特大ホロウインドウが浮かび上がった。

他に立候補者が上がることなどほとんどない。それゆえにファナハン自身でさえ片手で数えるほどしか見たこ
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