暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜暗躍と進撃の円舞〜
弱きは言い訳にならず
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でもない、という言葉でもまだ足りない。凄まじいまでの人数が、宙空から吐き出され、遥か下――――ジッグラトの天頂を目指し、落下していく。

処理が追いついていないのか、ところどころで描画テクスチャが不気味にラグる。

―――なん、だ?

「何を……何をしたいんだ!お前達はッッ!!」

思わず、口をついて出た叫びに、明確な返答はなかった。

返されたのは、笑み。

ギヂリ、と。

口角が裂け、焼け爛れたような愉悦の嗤いが、遠く圏外の空に滞空(ホバリング)する狐耳の女性の顔に浮かぶのが分かった。

女性は言う。決して彼に投げかけることのない言葉を。

だがまさしく、彼の疑問に答える形で。

「おー、サクラ。相変わらずおもろい口調やねぇ。ほなら約束通り、あんさんがやってええで」

「やたっ!ラッキー!」

ぴょんぴょんと元気よく飛び跳ねた少女は、その流れでウインドウを出し、何事か操作をし出す。

その様子を呆然と見ることしかできないファナハンに、そこでやっとヒスイは声をかけた。

「あぁ、別に特別なことはせぇへんで。……そやなぁ――――」

ぞぅ、と。

何度目かの悪寒が、背筋を這った。

言葉にされたら、現実になってしまうと言うかのように。

「今日って――――」

やめろ。

言うな。



「選挙の日やったよな?」



その言葉を皮切りに、幾つかの出来事が同時に起きた。

まず、シナルの街並みを照らし出す街灯やかがり火といった光源が、一斉にその明度を落とした。それとほぼ同時、NPC楽団が奏でる牧歌的なBGMが突如勇ましいものに変わり、どこからともなくファンファーレのような、どことなく王者に挑む挑戦者(チャレンジャー)に送る讃美歌にも聞こえるサウンドエフェクトが鳴り響く。

これを――――この現象を、ファナハンは知っている。

少なくとも、今この場にいる誰よりも。

これは、選挙立候補者が出現した際の、より正確には立候補シークエンスが完了した合図だ。

今この瞬間、次期領主選挙に、ファナハン以外の立候補があったことの宣言なのである。

「き……さま……!まさかッ!」

激昂とも、蒼白とも取れる何とも複雑な表情を浮かべる男を鼻で嗤い飛ばし、遥か彼方をゆるやかに滞空し続けるヒスイは口を開く。

「おんやぁ、どしたんその表情は?まさかずぅっと選挙が自分以外手を上げない独り相撲状態が続くとでも思ってたんけ?だとしたら、ちっとばっかし先見の明ゆうのが足らんと違うか?」

ふぅ、と。

狐耳の女性は、煙管から吸った紫煙をゆるゆると吐き出した。

常とは違う、ペールグリーンの煙は夜気を独特な軌跡を描いて漂って、消える。

その切れ長
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