第七話:転校生と殺人鬼
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倉持技研の潜入出張からはラシャにとって極めて退屈で平凡な日々が続いた。ラシャは一介の用務員に過ぎないので、一夏達とは最低限の接触しか出来ない立場だ。
だが、それでも一夏は彼の元へ通い詰めていた。やはり気の置けない人間であること、同じ男であることが根底にあるのか、他愛のない会話から学校の愚痴、ISに乗るということはどういう感覚か、クラスメイトと決闘した結果和解した。などといった、まるで父親に話す子供のように接していた。ラシャ自身も、子供の話を聞く父親のように一夏に接し、父性を振りまいていたのでIS学園の女性陣の間ではちょっとした名物になりつつあることは、二人共知らない。
その日、二人は武道場で睨み合っていた。一夏は武道着に木刀を携え、ラシャは用務員の作業服を纏った無手である。木刀を正眼に構えてラシャに向き合う一夏に対して、ラシャは無形の構え。膠着状態を破るべく、一夏はラシャに対して袈裟懸けに振り下ろしたが、ラシャは皮一枚で回避すると、掌底を叩き込み一夏を吹き飛ばした。ギャラリーからは感嘆の声が漏れ、隅でどちらが勝ったかの賭けの配当が行われていた。
「やっぱりラシャ兄には敵わねえなあ…」
「だが腕を上げたのは確かだ。ほら、立てるか?」
ラシャは一夏に手を差し伸べた。
「ラシャ兄なら千冬姉を任せられるんだがなあ」
「それは一人前の男のセリフだ」
ラシャは一夏にデコピンをお見舞いした。朴念仁のくせに鋭いところは妙に鋭い。千冬を再優先させる行動アルゴリズムは相変わらずのようだ。
その日の夕方、学園にはびこる雑草を粗方片付けたラシャは、ボストンバッグを片手に立ち往生している少女を発見した。
「ったく、本校舎一階の総合事務受付ってどこよ…地図だけ渡されても分かんないもんは分かんないわよ」
成る程、迷子のようだ。山田先生が近々転校生がやって来ると言っていたのを思い出したラシャは、一介の職員である義務を全うすべく彼女に近づいた。
「お困りのご様子ですがどうされました?」
帽子を目深にかぶり直し、少女に近づく。
「あ、用務員さん?ちょっと転入届の為の受付に行きたいんだけどさあ…ほらここ」
少女はポケットからシワクチャになった紙を取り出すと、一階のフロアの一画を指差す。
「ああ、そこですか。5分もあれば行けますので案内しますよ」
ラシャは廊下の一画を指差して少女を案内しようとしたのだが、少女は動かなかった。否、動けなかった。彼女の視線の先には黒髪の大和撫子(笑)と金髪お嬢様(双方ラシャ視点)と談笑しながら寮へ向かう弟分が居た。
「おー、一夏のやつ青春してるなあ」
「…んなのよ…達は…」
「ん?」
「ぬぁんなのよあの女達は〜〜〜っ!!」
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