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河童
第六章

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「別にな」
「ええんかいな」
「お店の中で暴れん限りな」
 それならというのだ。
「別にな」
「うち等がさっき話した通りか」
「ほな自分はお稲荷さんが化けたお客さんもあかんのか」
「そのお客さんが稲荷ばかり食うても」
「そうなるけどな」
「ううん、それは」
「一緒やろ」
 河童と、とうのだ。
「お稲荷さんも狐やしな」
「そやな」
「かえって有り難いやろ」
「神様やしな」
「お客さんは誰でも一緒や」
「お金払うんならか」
「そや、実は人間やなくてもな」
 それでもというのだ。
「そこはどうでもええんや」
「暴れることがないと」
「それでええんや」
 こう言うのだった。
「別にな」
「そういうものか」
「そや、別にや」
「そういうものか」
「御前等が生まれる前もそうしたお客さん来たわ」
 そうだったというのだ。
「真っ赤な顔で髪の毛がもじゃもじゃで毛深い」
「それって」
「鬼やと思うやろ」
「何かな」
「角は見えんかったけどな」
 それでもというのだ。
「やたら大柄でよお食ったわ」
「そうやったんか」
「どっかでうちの店の味を聞いて来たのかも知れん」
 その鬼の様な客はというのだ。
「けどや」
「お客さんやったからか」
「しかも暴れたりもせんかったからな」
 このこともあってというのだ。
「別にや」
「お客さんとしてか」
「わしはちゃんと寿司出したで」
「そうしたで」
 母親も言ってきた。
「うちもそのお客さん見たけどな」
「そんなこともあったんかいな」
「そら世の中人間以外にも一杯おるわ」
 父はこんなことも言った。
「それでや」
「人間やないお客さんが来ても」
「そこはあえて言わんで気付かんふりしてや」
 そのうえでというのだ。
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