第五章
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「正体は河童か」
「そうちゃうか?」
「河童が人間に化けてうちに来てか」
「毎日河童巻食うてるんちゃうか?」
「何かな」
首を傾げさせてだ、ゆめは兄に言葉を返した。
「そんなことは」
「ないっちゅうんか」
「そう言いたいけどあのお客さん見てたら」
「河童そっくりやろ」
「肌も何か緑色っぽいしねっとした」
「そんな感じするやろ」
「ほんまに河童みたいにな」
そうしたものまで見て言うのだった。
「なってるな」
「しかも食うのは河童巻だけ」
「条件揃ってるな」
「揃い過ぎやろ」
「河童がうちのお店来て河童巻食べてるか」
「そうかもな」
「何かな」
首を傾げさせつつだ、ゆめはまた兄に言った。
「ちょっと想像出来ん話やけど」
「否定出来んやろ」
「あのお客さん見てたらな」
あまりにも河童そっくりでしかも河童巻しか食べないからだ。
「どうしてもや」
「そや、河童が来てうちの店で食べてるんや」
「凄い話やな」
「そう思うやろ」
「大丈夫かいな」
ゆめは兄が今度は今日残っていたネタの一つ蛸を握るのを見ながらこんなことを言った。
「尻小玉抜かれへんか」
「あれほんまはないからな」
「ないんか」
「人間の身体にはな」
「そうなんか」
「そやから河童はほんまはそんなことせん」
人の尻から尻小玉を抜く様なことはだ、これを抜かれると死ぬか腑抜けになると言われている。
「相撲が無類に好きなだけや」
「実際の河童はそうか」
「そうらしいわ」
「ほな特に怖くないな」
「ああ、河童でもな」
その客の正体がだ。
「別にな」
「それやったらええけどな」
ゆめとしてもだ。
「悪いことせんのやったら」
「普通寿司屋で相撲は取らへんしな」
「まあ普通はな」
「そんな非常識な客はおらん」
常識で考えてだ。
「酔って暴れる客はおるけどな」
「それでも普通はせんな」
「そやからな」
「あのお客さんがほんまに河童でも」
「どんなもんか」
「そんなもん気にするな」
ここで父が二人に店の端から言ってきた、店の売り上げの勘定を一時中断してから。
「別にな」
「気にせんでええん?」
「暴れんかったらええやろ」
ゆめにもこう言った。
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