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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十三話 兵は詭道なり
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司令室のスクリーンには第一から第八まである戦闘区域の状況が映っています。帝国軍の攻撃は必ずしも上手く行ってはいません。というより守っている同盟軍のほうが圧倒的に有利です。帝国軍は既に二度攻撃を中止し体勢を立て直して三度目の攻撃をかけてきました。もう止めたほうが良いのに……。

私達は皆、装甲服を着ています。ヴァレンシュタイン少佐も装甲服を着ています。華奢で小柄な少佐が装甲服を着ていると着ぐるみを着ているみたいです。皆もこっそり笑っています。万一の場合には基地内での戦闘も有り得ますから当然なのですが、実際に基地内で戦闘になるなど誰も考えていないでしょう。そのくらいこちらが優勢です。

低空から地上攻撃メカが基地に突入しようとしますが、突入以前に同盟側の近接防御火器システムに撃破されています。滅茶苦茶凄いです、圧倒的に地上攻撃メカを撃破してしまうのでなんか映画でも見てるんじゃないかと勘違いしそうです。

近接防御火器システム、六銃身のレーザー砲に捜索・追跡・火器管制システムを一体化した完全自動の防御システムです。今回ヴァレンシュタイン少佐が大量に運び込んだ武器の一つですが基地防御に大きく役立っています。

もしそれが無ければ、同盟の防御陣はたちまち地上攻撃メカによって蹂躙されていたでしょう。そうなれば当然ですが反撃力も減少します。帝国軍が突入してくるのも時間の問題だったはずです。

地上攻撃メカが撃破された事で無傷の同盟側の防御陣からは帝国軍に向けて次々に多機能複合弾が打ち込まれます。装甲地上車が破壊され兵士の身体が宙に舞いました。とても正視できません、酷いです。

逃げ出した兵士達には長距離狙撃型ライフル銃による狙撃が待っています。助かったと思う間も無く狙撃され殺されるのです、帝国軍の兵士にとっては地獄です。

もう分かったと思います。あの救援要請は嘘です、被害甚大なのは帝国軍のほうです。救援を欲しがっているのも帝国軍でしょう。実際、この救援要請を出した通信オペレータは笑い過ぎて涙を流していました。今年最大の冗談だそうです。実際今も一時間おきに救援要請を出しますがその度に司令室には笑い声が起きます。

こんな悪質な冗談を命じる人間は当然ですがヴァレンシュタイン少佐です。
“どうしてこんな救援要請を出すのか”
セレブレッゼ中将が尋ねると少佐はこう答えました。
“こちらが優勢だと通信すると宇宙艦隊の来援が遅くなる可能性が有ります”

確かにそれは有ります。でも私もバグダッシュ少佐もそれだけとは考えていません。ヴァレンシュタイン少佐はそんな単純な人じゃないんです。こっそり問い詰めると少佐はにっこりと笑いました。

“敵の攻撃部隊の指揮官はリューネブルク准将です。彼はグリンメルスハウゼン艦隊の中で孤立しています
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