第三章
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「食うぞ。いいな」
「ええ、それじゃあ」
「今から」
腹が減っては、だった。彼等は食事を食べることも忘れていなかった。こうして鉄道でロシアの広大な台地を北から南に移動した。そうしてだった。
そのクリミアに来た。そこはというと。
「結構暖かいな」
「そうだよな。これがソ連か?」
「ソ連って寒いだけじゃないのか?」
「違ったのか」
「ロシアっていっても広いからな」
その意外な暖かさに戸惑う兵士達にだ。ヘッケンが話した。
「だから暖かい場所もあるさ」
「へえ、そうなんですか」
「レニングラードなんて油断したら凍死しますけれどね」
「ここは違うんですね」
「結構暖かいんですね」
「ああ。ただしな」
ここでだ。ヘッケンは兵士達にこのことを言うのを忘れなかった。
「ロシアだからな」
「冬は、ですか」
「やっぱり寒いんですか」
「そうらしいな。ロシアはロシアだ」
正確に言えばソ連でありしかもクリミアはウクライナだ。だがヘッケンはソ連とロシア、ついでにウクライナを一緒にして兵士達に話していく。
「冬は地獄だからな」
「じゃあ冬が来る前にですか」
「あの冬が来る前にですね」
「決着をつけないといけないんですね」
「クリミアでの戦いも」
「さもないとレニングラードみたいになるぞ」
彼等が包囲しながらも今だ陥落していないその街とだというのだ。
「ああなりたくはないだろ」
「確かに。ああいうことはですよね」
「もう勘弁して欲しいですね」
「モスクワじゃあと一歩だったみたいだし」
「それなら」
「そうだ。何としても攻め落とすぞ」
まさにだ。冬が来る前にだというのだ。
「いいな。じゃあ線路を敷いてな」
「はい、列車砲を組み立ててですね」
「そのうえで攻撃を開始しましょう」
「あそこに」
クリミア半島はその周りが殆ど海だ。彼等もその海、黒海を見ている。黒海といっても今の水面は青くウクライナの黒い大地と共にそこにある。
しかしその大地にだ。無数の鉄条網にトーチカ、塹壕があった・
そういったものを見てだ。彼等は言うのだった。
「全く。見事なものですね」
「よくもまああれだけトーチカを築けるものですよ」
「イワンの奴等ってのは本当にトーチカ好きですよね」
「一体幾つあるのやら」
他には機関銃座に高射砲陣地もあれは迫撃砲も多く見える。そこはまさに要塞だった。迂闊に攻め込めば蜂の巣どころか吹き飛ばされるのは明らかだった。
それを見てだ。司令部にいるハイネセンも言うのだった。
「これは確かにな」
「そうですね。突撃なんてできませんね」
「戦車でも」
「ああ、無理だ」
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