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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
外伝
外伝『雷禍と凍漣〜竜具を介して心に問う』
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交換して」という子供の食卓のような光景を浮かべるだろう。優雅な紅茶を嗜む時間はせめて穏やかであってほしいと、ソフィーはせつに思う。ある意味での嫉妬と勘違いされるかもしれない。
リーザにとっては、挨拶代わりの、ただのからかいに過ぎないのだが――

「エリザヴェータ、失礼よ。誤ってちょうだい」

ちょっと厳しい口調でリーザをしかりつけるソフィーは、何とかこの場の空気をなだめようと懸命につとめる。
些細な事……フォークが転がるようなことでも荒立てる気性の激しい両者だから……いや、違う。
苛立つ原因と心当たりがあることを、ソフィーは既に知っている。

「ごめんなさい……ミラ。でも、貴女ならわかるでしょう?」
「……なるほど。仕方がないわね」

一時の沈黙。それは、「とある銀髪の戦姫」に関わることを、凍漣の少女は察したからだ。
雷禍の主、リーザはソフィーの指摘を受けて顔を背ける。

(ソフィーヤ……オベルタス)

この三人の姫君のうちの一人、リーザは同じ竜具を持つ戦姫となってからの短い付き合いだが、ロジオンの着服問題の件を含めて、若干な苦手意識を抱いていた為か、ソフィーをいつも無意識に避けていた。
それはソフィーの錫杖の光を嫌うような行為であったかもしれないが、エリザヴェータにはその自覚はない。

「ティグルヴルムド=ヴォルン伯爵といったかしら?どこの田舎貴族か知らないけど、彼女に付き合わされるなんて、かわいそうね」
「うだつのあがらない捕虜に入れ込んでいるのは、彼女らしいですけれども」

エレンの気に入る人物を、戦姫二人でそのように評価されては、ソフィーも流石に紅茶を満足に味わい難い。『商人ムオネンツォ』とまでは言わないが、随分と飲み物が旨くなくなる会話であった。仮にも戦姫たる者が、そうそう影口を叩くべきではない。
そういえば、影で思い出した。『封妖』の主は今頃何をしているのだろうか?
そんな二人の会話を無視するかのように、ソフィーは持ち前の舌鋭を以て切り込んだ。

「竜具を介して心に問う」

唐突に告げられた言葉。それは、どことない鋭さを以て、年若い二人の戦姫の心を貫いた。
彼女――ソフィーの竜具には、唯一『刃』がない。だが、あらゆる竜具の刃を上回る輝鋭さが、彼女の意志に秘められている。それはさながら『錫杖』故の仕込み刀のように――
サーシャの伝えたい言葉、そこに秘められた想い。レグニーツアの寝室で募らせている、皆の未来を憂う黒髪の戦姫にできる事。
緑の瞳に光の輪郭が走る。
ソフィーは、静かに語り始めた。





◇◇◇◇◇





「竜具の意志は、決して主を偽らないわ。人の心はなおさらよ」

一通り話し終えたソフィーは、不思議な説得力を以て、ミラとリーザの耳朶にしみ
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