巻ノ八十二 川の仕掛けその八
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「だから安心せよ」
「わかり申した」
「おそらく今日大きな戦があった」
「では明日にでも」
「報が届く」
放っている忍達からというのだ。
「それを待って今はな」
「ここにいますか」
「そうしようぞ」
こう言うのだった、そして実際にだった。昌幸は夜明け前に起こされてその報を聞いた。そのうえでこう言ったのだった。
「わかった」
「あの、しかし」
「敗れたからか」
「はい、お言葉ですが」
報を届けた忍は落ち着き払っている昌幸に驚いた顔で言うのだった。
「この度のことは」
「大変だというのじゃな」
「我等が敗れましたので」
「わかっている、しかしだ」
「それでもですか」
「落ち着いてな」
そうしてというのだ。
「ことにあたる、では源次郎にもじゃ」
「あの方にも」
「このことを知らせよ」
忍の者に対して告げた。
「よいな」
「はい、それでは」
こうしてだ、昌幸だけでなく幸村も報を聞いた。それは関ヶ原において石田達が敗れ大谷が死んだというものだった。
朝になりだ、幸村は朝飯の前に昌幸のところに赴き言った。
「報は聞きました」
「そうか」
「立派なご最期だったとか」
「自ら腹を切られてな」
「最後まで勇敢に戦われたうえで」
「あの御仁らしいな」
「見事な戦ぶり、ご最期だった」
幸村は瞑目する様にして言った。
「それがしも話を聞いてです」
「よかったと思っておるか」
「生きていて欲しかったのは事実です」
義父である彼にだ。
「しかしです」
「武士として見事に戦った」
「それならば」
「いいか」
「はい、それがしあの方を義父に持ち果報者です」
「天下一の義父殿じゃな」
「そう思っておりまする」
実際にというのだ。
「よかったです」
「そうであるな、それでじゃが」
「はい、これからはですな」
「源三郎の仕事じゃ」
それになるというのだ。
「あ奴には思う存分働いてもらおう」
「それでは」
「我等は大人しくしておるぞ」
「そうしてですな」
「時を待つとしよう」
こう言ってだ、昌幸は幸村と共に身を慎みはじめた。関ヶ原でのことは忽ちのうちに天下に伝わり一旦は戦の場から逃げ延びた石田もだ。
捕まり都の四条河原で安国寺恵瓊や小西行長達と共に処刑されることになった。だが彼はこの時も堂々としておりだ。
小西にだ、こう言ったのだった。
「わしは死ねばな」
「そしてあの世に行ったらか」
「まずは桂松に謝る」
大谷、彼にというのだ。
「こうなったことをな」
「そうするか」
「あ奴の助けを借りたというのに」
それでもというのだ。
「こうなったからな」
「頭を下げるか」
「そうする」
こう言うのだった。
「全く以て不甲
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