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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十話 思惑
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かし、どうも俺にはよく分からない。
「総司令部が基地を守れと言えば済む話じゃないのか?」
俺の問いかけにヤンが首を振った。
「そう簡単には行かないと少佐は見ています。おそらく敵味方の艦隊が混じり合い統制など取れなくなると見ている、そうなれば基地は孤立する可能性が高い……」
部屋に沈黙が落ちた。
「……それで中佐を第五艦隊にという事ですか」
「そういうことだね、バグダッシュ少佐。基地を守る事を優先するようにということだ。だがそれだけではないかもしれない……」
「?」
皆が疑問の視線をヤンに向けた。
「もしかすると彼は別な事を考えているかもしれません」
「別な事とは」
シトレ本部長の問いかけに一瞬、ヤンは躊躇いを見せた。
「……例えばですが、基地を囮にしてヴァンフリート4=2で艦隊決戦を演出する……」
「!」
「混戦になり敵味方共が混乱している時、そんな時にヴァンフリート4=2に基地が有ると分かれば帝国軍は必ずヴァンフリート4=2に来ます。それを積極的に利用して同盟軍をヴァンフリート4=2に誘引する……」
「馬鹿な、基地を危険に晒すというのか?」
思わず声が震えた、だがヤンは動じていない、冷静な口調で話を続けた。
「危険ではありますが、宇宙艦隊の支援を受けられます。孤立するよりは良い……。彼が恐れているのは孤立して基地単独で帝国軍と戦う事でしょう」
「……」
部屋に沈黙が落ちた。皆が考え込んでいる。ヤンの考えが正しいとすればヴァレンシュタインは基地防衛だけではなく、ヴァンフリートの会戦そのものを自らコントロールしようとしている。
クスクスと笑い声が聞こえた。シトレ本部長が楽しそうに笑っている。
「楽しくなってきたな。ヴァレンシュタイン少佐がヴァンフリートの会戦を演出するか……。もしそうなら我々は益々彼を手放す事は出来ない、帝国に返すなどもっての外だ。そうだろう、バグダッシュ少佐」
「その通りです、本部長」
帝国に返す? どういうことだ? シトレ本部長とバグダッシュ少佐は笑みを浮かべている、ヤンは訝しげな表情だ。
「それはどういう意味です、本部長?」
俺の問いかけに本部長はニヤニヤと笑みを浮かべるだけで答えない。答えたのはバグダッシュ少佐だった。
「その通りの言葉ですよ、大佐。ヴァレンシュタイン少佐は帝国に帰りたがっている。そして帝国では彼を帰還させようと動いている人間が居るんです」
「……始めて聞く話だな、バグダッシュ少佐」
俺の皮肉にもバグダッシュ少佐は肩を竦めただけだった。可愛げのない奴だ。
「昨年のフェザーン出張、あの時ヴァレンシュタイン少佐は帝国高等弁務官主催のパーティに出ていますが、それで分かりました」
「ヴァレンシュタイン少佐は帝国と接触したのですか?
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