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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第十話 思惑
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んだ。よく見ると本部長につられて笑っている人間が二人居る。
「楽しそうだな、ヤン、バグダッシュ少佐」
俺の言葉に二人がバツが悪そうに笑いを収めた。
「まあ、出来る部下を持つと色々と大変ですな、大佐」
バグダッシュ少佐が堪えられないというように笑い声を上げた。ヤンは笑いを噛み殺している。
こっちは笑い事じゃない、ヴァレンシュタインはヴァンフリートのセレブレッゼ中将に飛行場を造るように要請した。基地から離れた場所で数箇所造れと……。要請とは言っても俺はシトレ本部長の名を使っているのだ、事実上命令と言って良い。今頃セレブレッゼ中将は必死で飛行場を造っているだろう。
「バグダッシュ少佐、そっちはどうなんだ。遠征軍の艦隊編制、将官以上の地位にある人間のリストを要求されたのだろう?」
「うちは防諜課ですからね。その件については調査課に頼んであります」
暢気な声だ。表情にも緊張感は欠片もない、思わず皮肉が出た。
「大丈夫か? 信用できるのか、調査課は。連中、ヴァレンシュタインに良い感情は持っていないだろう」
「確かに良い感情は持っていません。しかし彼の実力は分かっている」
「……」
「情報と言うのはそれを扱う人間によってダイヤモンドにもなれば石ころにもなる。彼は帝国人です。我々などより遥かに帝国軍人に関しては詳しい。彼がその情報を今回の戦いの中でどう使うのか、皆それを知りたがっているんです。問題は有りません」
自信有りげなバグダッシュ少佐の声だった。シトレ本部長が満足そうに頷く。視線をヤンのほうに向けた。
「ヤン中佐、ヴァレンシュタインは今回の戦いがどうなると考えているか、分かるかね?」
シトレ本部長の問いかけにヤンは頭を掻きながら答えた。
「ヴァンフリート4=2へ送られた物資を見ると彼はヴァンフリート4=2で地上戦が発生すると見ているように思えます。しかし私と話した時、彼は帝国軍が基地の存在を知らない可能性が有る、その可能性が高いと見ていました」
「……矛盾するな、それは」
シトレ本部長の言葉に皆が頷いた。確かにそうだ、基地を知らなければヴァンフリート4=2で地上戦など発生しない……。皆の視線がヤンに集中した。それを受けてヤンが口を開いた。
「基地の存在を知らなければ帝国軍は同盟軍の撃破を目的とします。当然艦隊決戦が生じますが、少佐は混戦になり決着は着かないだろうと見ています。そしてその混戦の中で基地が帝国軍に発見されるのではないかと考えている……」
「なるほど……、基地が発見されれば当然だが攻略しようとするか……」
「問題はその時です、同盟軍は基地を守れるか、守ろうとするか、少佐はそれを危ぶんでいるように見えました」
シトレ本部長が考え込んでいる。それなりに思うところが有るのだろう。し
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