暁 〜小説投稿サイト〜
亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第九話 獅子搏兎
[2/6]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
は吐いていません。
「ミハマ中尉、情報部のバグダッシュ少佐に連絡を取ってください。そして帝国軍の遠征軍の艦隊編制、将官以上の地位にある人間のリストを要求してください」
「将官以上ですか?」
各艦隊の司令官というなら分かります、でも将官以上? そんな思いがつい口に出ました。少佐が私を見ました、冷たい眼です。すみません、私、間違ってました。でも謝る前に冷たい声が聞こえました。
「将官以上です」
「はい……」
身が竦みました。ヴァンフリート4=2に行くと決めて以来ヴァレンシュタイン少佐の表情は変わりました。それまではいつもにこやかに笑みを浮かべていたのに、昨日から少佐の顔には笑みが有りません。そして目は凍てつくように冷たい……。
雰囲気も変りました。これまでの穏やかで暖かい雰囲気は有りません。何処か周囲を拒絶するかのような厳しい雰囲気を身にまとっています。以前の少佐が陽だまりなら今はブリザードです。補給担当部の人間は少佐の変貌に皆驚いているけど、ヴァンフリート4=2に行くのだと知って皆納得しています。戦場に赴くので緊張しているのだろうと……。
そうじゃないんです。少佐は本当は帝国と戦いたくなかったんです。いつか帝国に戻るために戦いたくなかった。それが戦う事になってしまった……。多分心を殺しているんだと思う。そうでなければ戦う事など出来ないから。
少佐が心を殺したから私の知っている少佐も死んでしまった……。いつも穏やかで優しい微笑を浮かべていた少佐、意地悪でサディストでどうしようもない根性悪だけど、それでも今の少佐よりずっと、ずっと良い、ずっと人間らしかった……。もう会えないのだろうか……。
バグダッシュ少佐は昨年のスパイ騒動の解決で大尉から少佐に昇進しました。もっとも少佐への昇進はスムーズに決まったわけではありません。例のスパイ騒動がバグダッシュ少佐とキャゼルヌ大佐への仕返しだという事が問題視されたのです。
昇進はしたが他の人よりも三日遅れの昇進でした。バグダッシュ少佐は“まあ昇進できたんだからな、それでよしとしよう”と言っていたけどそんな単純な問題じゃありません。
この後も三日遅れの昇進というのは付いて回るし、その度に情報漏洩事件の事が蒸し返されるでしょう。他の人との出世競争では一歩とは言えなくても半歩くらいは不利になります。
少佐に連絡を取るとすぐにTV電話のスクリーンに少佐が現れました。以前は情報部に連絡を取ることなど出来なかったけど、例の事件で情報部に出向という形を取っています。私が情報部に連絡を取っても誰も不審には思わないし私の素性がばれる事もありません。
「バグダッシュ少佐、お久しぶりです」
『ミハマ中尉か、久しぶりだ。元気かな』
「はい、おかげさまで」
嘘です、昨日も連絡を
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ