第一話
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『・・・が、・・・・応答・ろ! ・・・!!』
都会から数十キロ離れたスラム区。その廃墟のビルで激しい戦闘が行われていた。銃弾や爆弾などで床や壁は砕け散り、数え切れないほどの死体。建物全体に火が回り、脱出することが不可能だった。
そんな中、一つだけ動く姿があった。
全身を隙間なく覆う、薄いタイツのような防護服に身を包んだ一人の男である。
男はうつ伏せの状態から立ち上がろうとするが、身体を支えきれず倒れこむ。やがて立ち上がるのを諦め、這い蹲って近くの壁まで移動し、背中を預け一息つき耳に取り付けてある通信機のスイッチを入れた。
「ハァ、ハァ、こちら・・・コード・ゼロ」
『おい! まだ生きてるよな!? 生きてんなら返事しろ!!』
「・・・ッうるさい。ハァ、ハァ、ハァ。聞こえてるぞ」
『無事か!? 状況を報告しろ!!』
通信機から聞こえてくる男に報告をするため、無数の死体の中で高級そうな服装をした男の死体に目を移す。
全身を銃弾に撃ち込まれ、爆破の衝撃によって人としての原型を多少崩れているそれは男が所属している組織のターゲットであった。
「ターゲットの始末は・・・完了した。後は・・・ゴホッ! ハァ、ハァ・・・後始末・・・かな」
『おい待て! それは最後の手段だろ!? 早くそこから脱出しろ!!』
「ハ、ハハハ・・・そりゃ無理だ、な」
男は力なく笑い、自分の身体を見る。
腹部に数発の銃弾を受け、左足は膝下が爆弾によって失われていた。右腕の感覚はほとんど無く、言葉を発することさえ苦痛な状態は、満身創痍を表していた。
唯一、僅かだが動く左腕でポケットから小さな端末を取り出し、解除コードを入力する。この端末は爆弾の起爆装置だった。ビル内に仕掛けられた爆弾は、爆破すれば確実にこのビルを崩壊させることが出来る。この男も巻き添えにして。
『諦めんな!! 今近くの部隊を送る! それまで待ってろ!!』
「止めろ。時間が・・・無い、んだ。それに、目的を・・・果たせたから、未練は・・・ない」
男の目的・・・それは敵討ちだった。
高級な服を着た人物が起こしたゲームと言う殺人によって家族を殺された男は、敵を撃つために裏の組織・・・特殊エージェントに入り厳しい訓練を耐え抜き、長い年月をかけて敵を討てたのだ。
俺に・・・残されてるのは、何もない。笑って・・・逝けるさ。
「じゃぁな。そっちの生活も・・・楽しか・・・った」
「待て! 通信をッ・・・」
通信機のスイッチを切り、爆弾の起爆装置へと指を伸ばす。
血を失いすぎて今にも倒れこみそうだが、残された力を振り絞り・・・スイッチを押した。
僅かに響く破砕音。それは徐々に大きくなり、遂に天井が崩れ落ちた。それを眺めていると、脳裏に昔
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