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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七話 切なさと温かさ
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うですか、良かった、それだけが心配でした」
「……」
「私は彼を守れなかった。だからあいつは亡命した、私に迷惑はかけられないといって……」

切なくなるような口調でした。この人は自分を責めています。大尉を守れなかったと後悔している。でも守れなかった? だから大尉は亡命した? どういうこと? 大尉は殺されかかって亡命したんじゃないの。迷惑をかけられない?

「こんな事を貴女に頼むべきではないのかもしれない。でも貴女しか頼める人はいない。あいつに伝えてもらえますか」
ミュラー中尉はじっと私を見詰めてきました。こんな眼で見詰められたら到底断われません。

「何をでしょう」
「アントンとギュンターが例の件を調べている。必ずお前を帝国に戻してやる。だから元気でいろと……。御願いします」

私は黙って頷くのが精一杯でした。帝国には大尉の帰還を待っている人がいます。それだけじゃありません、そのために動いている人がいるようです。多分大尉もそれを知っているのでしょう。いつか大尉は帝国に戻る……。だから前線に出たがらない、帝国軍との戦いを彼は望んでいない……。

大尉が此処へ来たわけも何となくわかりました。大尉は自分が無事だという事をミュラー中尉に見せたかったのでしょう。あの時、二人はまるで初対面のように会話をしていました。どれだけ二人で話をしたかったのか……。

でも大尉は直接ミュラー中尉とは話せません、話せばお互いに厄介な事になります。だからダンスを利用して私とミュラー中尉を接触させた。私を通して自分が元気でやっていると知らせたかった。そして中尉は私に大尉への伝言を依頼しようとしている……。

これが諜報戦? 派手なアクションも陰謀も冷酷さも無い。有るのは切なさと親友を思う気持、それだけが溢れています。なんて温かいんだろう、なんて切ないんだろう……。そしてそれに触れた私はどうすれば良いのだろう……。

ダンスが終わりました。私とミュラー中尉はヴァレンシュタイン大尉のところに戻りました。大尉は穏やかな表情でオレンジジュースを飲んでいます。
「ヴァレンシュタイン大尉、フロイラインをお返しします」

ミュラー中尉の言葉にヴァレンシュタイン大尉は黙って頷いただけです。ミュラー中尉も何も言わずに私達から離れていきます。二人ともどんな思いなのか……。堪らなかった、思わず口走っていました。
「大尉、宜しいのですか?」

ミュラー中尉にも聞こえたと思います、でも中尉が足を止める事はありませんでした。そしてヴァレンシュタイン大尉もオレンジジュースを穏やかな表情で飲んでいます。切なくて涙が出そうです。

でも泣けません、私が泣けば皆が不審に思うでしょう。そうなれば大尉にも中尉にも迷惑がかかります、だから泣かない……。それから何人かの帝国軍
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