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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七話 切なさと温かさ
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の人が多いです。私と大尉のように若いカップルは他には見当たりません。周囲も訝しげに私達を見ています。
大尉は気にすることもなく受付に向かいました。いつも思うのだけれどヴァレンシュタイン大尉は驚くとか慌てるとかが全くありません。何でそんなに落ち着いてるんだろう。私には到底真似できそうにありません。そんなところが可愛げが無いように思えます。
ヴァレンシュタイン大尉が内ポケットから招待状を出し、受付係に差し出しました。受付係が招待状を確認し始めます、大丈夫かしら? 私にはあの招待状が死刑執行命令書にしか思えません。
受付係の若い女性はにこやかにヴァレンシュタイン大尉に話しかけてきました。
「失礼ですがお名前をお教えいただけますか?」
大尉は受付係に劣らず笑みを浮かべています。
「自由惑星同盟軍、エーリッヒ・ヴァレンシュタイン大尉です」
その瞬間に私達の周囲が凍りつきました。皆が化け物でも見るかのように私達を見ています。そして私達から距離を取り始めました。受付係の女性も表情を強張らせて私達を見ています。多分私の顔も引き攣っているでしょう。笑みを浮かべているのはヴァレンシュタイン大尉だけです。
「その招待状に不審な点でも有りますか?」
にこやかにヴァレンシュタイン大尉が問いかけました。
「い、いえそうでは有りません。少々お待ちいただけますか」
受付係の女性が慌てて奥へ走って行きます。多分上に報告に行くのでしょう。まあ無理もありません、これまで同盟からパーティに出席者が来るなんて一度もなかったんだから。
受付係が戻ってくるまで十分ほどかかりました。その十分間はなんとも言えない十分間でした。誰も私達の傍に寄ろうとはしませんし視線を合わせようともしません。でも間違いなく私達を意識しています。いたたまれないような十分間でした。
受付係が顔を強張らせたまま戻ってきました。御願い、御願いだからパーティへの参加は認められないと言って下さい。私は喜んで婚約者を連れて帰ります。服も買ってもらったし、アクセサリーも買ってもらいました。私には何の不満もありません。
「お待たせしました、ヴァレンシュタイン大尉、そちらの御婦人のお名前を教えていただけますでしょうか?」
「ミハマ・サアヤ、私の婚約者です」
「有難うございます、どうぞお入りください」
世の中不公平だと思う。私の願いは滅多に叶わないのに大尉の願いは何だってこんなに簡単に叶うのでしょう。神様が贔屓しているとしか思えません。それとも贔屓しているのは悪魔?
パーティ会場に入りました。大きな会場だったけど私達が入った瞬間に会場の人間が皆、私達に視線を向けてきたのが分かりました。視線が痛い……。そしてここでも私達の傍には誰も寄ろうとはしないし、話しかけても来ません
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