MR編
百四十六話 恐れど
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「…………」
どうして、すぐにそんな言葉を掛けてしまうのか……縋りなりたくなってしまう、抑えているものを全て吐き出したくなってしまうそんな言葉を、どうして自分に掛けてしまうのか……自分の全てを理解して、全てを察しているのかもしれない幼馴染が、この時だけは、どうしようもなく恨めしく、同時に本当の本当にうれしかった。
「大丈夫だよ……」
その言葉だけで十分だ。
だって……自分を、本当の自分を理解してくれている人が、目の前にいるのだから。
「(貴方が居て、私の事、心配してくれてる)」
それだけで、自分は明日も立って、戦場に出ることが出来る。
「もう、リョウの後ろに隠れてた時の私じゃないよ?」
こんな嘘をついてでも、美幸は美幸の臆病を、恐れを、覆い隠さなくては……彼の歩みの、みんなの歩みの、邪魔になるわけにだけは、行かないのだ。
「そりゃ失礼。……けどな」
だから、お願いだから……
「無理はするなよ?ま、危なくなったらいつでも駆けつけて助けてやるから」
……今だけは、意地を張らせて下さい。
「うん。知ってる」
────
「っぅ……ぁ……っぃく……ぁあ……!」
リョウコウが去り、下の宴会を通り過ぎて自室へと戻る。一刻も早く、そうしなければならなかった。誰にも聞かれない、その場所に行かなければならなかった。
星空の見えないアインクラッドで、星の代わりに降り注ぐ天井からの灯りが、窓から洩れて彼女の頬を照らす。
膝をついた彼女の頬から、小さな滴が、二つ、三つと墜ちた。
「ぁぁ……っぁぅ……ぅぁぁあああ……!!」
怖い、怖い、怖い、怖い。
フィールドが怖い、モンスターが怖い、黒猫団のみんなが怖い、死ぬのが怖い、世界の全てが……怖い……。
「たす、けて……!!!!」
本当に言いたいその人に絶対に言えない言葉を、美幸は小さな灯りの中、かすれた声で呟いた。
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