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SAO─戦士達の物語
MR編
百四十六話 恐れど
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。だが……

「その……」
「……あー、やっぱり怖いか?盾の後ろに隠れてるだけでいいんだけど……」
「…………」
「……わかった、とりあえず、急がないからさ、ゆっくりやろう。だんだん慣れて行けばいいから」
「う、うん……」
無理だ、慣れられるわけがない、すぐ目の前にあの死が、モンスターが迫る等、そんな恐怖に耐えられるわけがない。そう思ったが、言葉にならなかった。自分の唯一のよりどころである居場所に居るために必要なことである。その事実と、ケイタの気遣うような瞳が、サチの弱い意志に言葉を発することを許さなかった。

────

その日以来、徐々にサチは、眠れなくなっていった。
夜ごと布団の中に入るたびに、「明日死ぬのではないか」という恐怖が心を襲った。死ぬ、どうなる?苦しいのか?死んだあとは?自分は消えてなくなるのか?そう考えるだけで、まるで足元に底の無い暗いくらい穴が開いたかのように恐ろしくなり、眠れず、灯りを付けてウロウロしてはまた寝床に入るの繰り返し。疲れ切っていれば眠れるものの、明らかに眠れる時間は短くなって行った。
そんな、ある日……とある奇跡が、彼女の元に訪れた。

2023年 4月8日 麻野美幸 16歳

その日の狩りの終盤、黒猫団は、少し大きめのモンスター群をひっかけてしまった。エンカウントした武装ゴブリンの集団の数は、テツオが支え切るには少し数が多く、potによる回復が間に合わないために、徐々に戦線は後退していた。全速力で出口まで逃げれば逃げ切れるかも知れなかったが、途中で他のモンスターをひっかけてしまったら、あるいは脱落者が出るかもしれない。そんな状況。

「……ッ」
じりじりと後退しつつ、何とか脇に回ろうとするゴブリンたちを迎撃しながら、サチはふと、このまま逃げ切れず、テツオが崩れたらどうなってしまうのだろうと考えてしまった。
テツオが崩れるということは、前衛が居なくなるということだ。乱戦になれば、長物を装備している自分の被弾率は格段に上がる。連続で攻撃を受け、転倒(タンブル)したりしたら……

「…………ッ!!!」
悲鳴を上げそうになる口を、慌てて抑える、駄目だ、考えてはダメだ。そう思っても、身体がすくみそうになるのを止められない。目を閉じそうになるのを必死にこらえる。けれど後退する戦線が、不安を益々増大させた。しかし……

「ちょっと前、支えてましょうか?」
聞きなれない声が、その意識を切るように後方から響いた。見ると、少し年下だろう剣士(ソードマン)の少年とケイタが、何事かを話している。彼らは二三言葉を交わし、少年がうなづくと彼は急に前に出た。

「え……」
「スイッチ!」
聞きなれた掛け声とともに、剣士の少年が前に出る。

『助け、て……くれ、る……?』
偶然が編み
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