暁 〜小説投稿サイト〜
真田十勇士
巻ノ八十一 上田城へその十三
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「どうしたのじゃ、急にどうにもならなくなったぞ」
「敵の伏兵です」
「そして城からうって出てきました」
「忍術も使ってきますし」
「それで乱れておるのです」
「そうか、これはまずい」
 秀忠は狼狽したまま言った。
「一旦退き陣を整えよ」
「若殿、それはです」
 榊原は秀忠のその言葉を聞き血相を変えて彼に言った。
「なりませぬ」
「どうしてじゃ」
「ここで退いては陣形が乱れたまま逃げてしまいます」
 だからだとだ、榊原は歴戦の経験から話す。
「そうした状況で逃げては敵の思うままです」
「だからか」
「はい、それはなりませぬ」
「しかしそう言ってもじゃ」
 秀忠は一転して攻め立てられる己の軍勢を見つつ榊原に言う、
「この有様では」
「ここは一旦踏み止まりです」
 そしてというのだ。
「陣形を整え」
「そしてか」
「はい、退くことも攻めることもです」
 そのうえでというのだ。
「致しましょう、ですが」
「今すぐはか」
「なりませぬ」
 こう言って秀忠を止めようとする、しかしここは昌幸が一枚上でだった。彼は忍の者に命じた。
「すぐに敵の中に入りじゃ」
「そして、ですか」
「退きの法螺貝を鳴らせ」
 徳川方のそれをというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
 徳川方の動きが乱れたままであるのを見てすぐに手を打った、そしてその退きの法螺貝の音を聴いてだった。徳川の兵達はすぐに動いた。
「退きじゃ!」
「退けとのことじゃ!」
「すぐに退け!」
「城攻めは止めじゃ!」
 攻め立てられながらも逃げ出す、榊原はそれを見て今度は彼が血相を変えた。
「何っ、兵達が逃げておるぞ!」
「今しがた退きの法螺貝が鳴りました!」
「それで兵達が逃げております!」
 伝令の者達がすぐに駆け付けて言ってきた。
「そのせいで」
「我等の軍勢が」
「今度はどうしたのじゃ」
 自身の命を待たずに逃げはじめる軍勢を見てだ、秀忠はまた言った。
「一体」
「わかりませぬ、何者かが退きの法螺貝を吹きました」
「また真田の策か!?」
「わかりませぬ、ですが法螺貝の声は全軍に響きました」
 だからだというのだ。
「これでは」
「もうか」
「はい、こうなってはどうしようもありませぬ」
 こう秀忠に言った。
「ですから」
「そうか、ではな」
 秀忠も頷いた、そしてだった。
 彼は全軍に逃げる様に言った。その際彼は自ら殿軍を務めようとしたが榊原がそれを制した。
「それがそれがしが」
「しかしこうしたことも」
「御大将に何かあってはどうにもなりませぬ」
 だからだというのだ。
「ですからここは」
「御主がか」
「はい、後詰はお任せを」
「済まぬな」
「有り難きお言葉」
 こう秀忠
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ